内堀知事「SDGsの視点、復興に」 いわきで県民シンポ

 
パネルディスカッションで意見を交わす(左から)村尾氏、内堀知事、山崎氏、野沢氏、高橋氏

 県は5日、いわき市で「ふくしま復興とSDGsを考える県民シンポジウム」を開いた。パネル討論で内堀雅雄知事は、本県の復興や創生につなげるために持続可能な開発目標(SDGs)の視点が重要とし「復興とSDGsを共に進め、福島をより輝かせるために一人一人が動くことが大事」と呼びかけた。

 2013年度から開いており、約200人が参加したほか、オンラインでも配信した。内堀知事は新たな県の総合計画について「世界的な発信につなげるためSDGsの視点を加えた。地道でも企業、学校、個人で必ずできることはある。一緒に取り組み、福島をもっと良くしたいと思う」と述べた。

 パネル討論には、地元産間伐材で高級割り箸や鉛筆などを製造する磐城高箸(いわき市)の高橋正行氏、ふたば未来学園高で授業を行うなど本県復興に携わってきた宇宙飛行士の山崎直子氏、学生時代に本県が関わる日米学生会議の開催に尽力し、外資系コンサルタント会社「キャップジェミニ」でコンサルタントを務める野沢玲奈氏も登壇。関西学院大教授の村尾信尚氏が進行役を務めた。

 山崎氏は、宇宙でも汚れにくい衣服や水を使わない洗剤などSDGsの視点を重要視していると紹介。「これからも福島の復興やSDGsを後押ししていきたい」と力を込めた。高橋氏は「持続可能な林業と地域の活性化を目指して事業を行ってきた」と強調、今後も自然を大事にしながらさまざまな製品作りに取り組む考えを示した。

 また、野沢氏は復興が進む本県について「大規模なハード整備と福島をより良くしたいという個人の思いでイノベーションが起き始めている」と評価し「世界とのつながりを支援していきたい」と語った。

 いわきFCの活動事例発表

 シンポジウムでは、震災からの復興やSDGsの達成に向けた活動事例も発表された。

 サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ社長の大倉智氏はビデオメッセージを寄せ、いわきFCについて「『スポーツで社会価値を創造する』『スポーツによる人づくり、まちづくり』『震災復興に寄与する』という目的から創設した」と説明。その上で「スポーツで地域の課題に取り組む手段としてサッカーをしている。目的と手段をぶれずに頑張っている」と強調した。また、いわき市と双葉郡をホームタウンとしていることから、海ごみを回収する清掃活動への参加や、市と共同で市民の健康増進事業を展開していることを説明。選手の食事に本県沖で取れる魚介類「常磐もの」を取り入れていることも紹介し、震災から12年を迎えようとする中、「震災を風化させないよう常に(震災の経験を)思いながらプレーしていきたい」と語った。

 事例紹介には大倉氏のほか、同市のJRいわき駅前でゲストハウスなどを運営する、やまと社長の北林由布子氏、田人町で活動する地域おこし協力隊員の下條由美子氏、倉島琴水氏が登壇した。

 SDGsアワードに3団体

 シンポジウムでは、県が本年度創設した持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向けた取り組みを顕彰する「ふくしまSDGsアワード」の受賞団体が発表され、猪苗代中、只見中、福島中央テレビが選ばれた。

 アワードは、SDGs推進に向けた連携基盤「ふくしまSDGs推進プラットフォーム」の会員が対象で、県内の企業や学校など29団体から応募があった。

 猪苗代中は生徒が地域住民らと共に、猪苗代湖の水質改善に向けて水草の除去作業に取り組んだ。取り除いた水草は肥料にし、コキアの栽培に活用した。

 只見中は山から海の環境を守るとの視点に立ち、海ごみを減らすためペットボトルを利用しない日を設けたり、新聞紙を使ったレジ袋を作成、配布したりした。

 福島中央テレビは情報番組「ゴジてれChu!」内で「ブンケン歩いてゴミ拾いの旅」を放送しており、環境保全への取り組みを広く発信している。

 席上、審査員を務めた村尾信尚氏、岡本全勝氏、山崎直子氏がそれぞれ講評し、各団体の代表者に賞状と記念品を手渡した。