富岡の神社、12年ぶり鳥居再建 津波で被災、案内板も新たに設置

富岡町の沿岸部・小浜地区にある正八幡(しょうはちまん)神社で、東日本大震災から12年を前に、津波で損壊した鳥居や碑文の再建が完了した。神社を管理する「小浜財産区1・2・3班権利者会」の江又勝彦会長(71)は「新たに神社の由緒を記した案内板も作成した。復興が進む富岡町で、地域の歴史を改めて関心をもってもらえれば」と語り、参道の整備などに汗を流している。
正八幡神社は、富岡川の河口近くの高台にある。本殿は階段にして90段以上ある高さにあるため被災を免れたが、参道入り口にあった鳥居や碑文などは津波にのみ込まれた。東京電力福島第1原発事故による全町避難もあり、しばらく本格的に手をつけることができなかった。
江又さんは震災前、富岡町で建築業を営み、かつて参道の手すりを手掛けていたことから神社に思い入れがあった。2019年に権利者会の会長となると、神社の復旧を提案した。ただ、江又さん自身も郡山市に避難しているように、会員は県内各地に移り住んでいた。江又さんは各地を回るなどして同意を得て、再建の道筋をつけた。鳥居を設置するための工事を進めると、かつて関わった参道改修工事を記念する碑文が埋まっているのが見つかり、改めて安置することにした。
また、神社本殿のある高台の環境を整え、津波被災からの復興が進む毛萱、仏浜地区が一望できるようにした。訪れる人に神社の由緒を知ってもらおうと、文献を調べるなどして、自ら文章を起案した案内板も完成させた。江又さんは「神社の近くには奈良時代の遺跡がある。かつて奈良時代の人も眺めたであろう富岡の浜辺の景色をみてほしい」と呼びかけている。