外来スイレン駆除に成功 黒沢福島大教授、薬剤使わず掘り起こす

 
外来種のスイレンの駆除作業をした参加者=2021年9月(黒沢教授提供)

 福島大共生システム理工学類の黒沢高秀教授(57)は8日、昭和村の矢ノ原湿原の沼地で繁殖していた外来種「園芸スイレン」の駆除に成功したと発表した。2018(平成30)年4月から人力で地中に張った根茎ごと掘り起こす作業を実施。黒沢教授によると、自然公園などで広範囲に自生した集団の駆除達成は全国でも初の事例という。

 福島大が同日開いた定例記者会見で発表した。園芸スイレンは在来の動植物の生態系に影響を与えるとし、環境省の重点対策外来種に指定されている。繁殖力の強さから根絶は難しいとされてきた。黒沢教授によると、矢ノ原湿原では1970年代から生息が確認された。2010年に121.9平方メートルだった生息域は18年に341.4平方メートルに拡大するなど、群生する在来のヒツジグサやミツガシワの生育阻害が懸念され同大と同村による駆除作業が行われてきた。

 駆除では沼地の環境保全のため、薬剤や遮光シートを使わない方法として人の手でスイレンの根茎を掘り起こす作業を採用した。同大の教員や学生、地元住民ら約30人が定期的に駆除を行い、22年11月に作業を完了した。黒沢教授は「人の手でスイレンの駆除が可能であることを示した意義は大きい」とした。

 黒沢教授は今後について、土中に残った種子による再びの繁茂の防止や在来種の植生回復が重要になるとし、引き続き経過観察を行っていくとした。同村の担当者は「専門的な知識に基づいた駆除を実施できたことは今後の管理にも役立てられる」と受け止めた。