富岡、4月1日に避難指示解除 夜の森中心とした復興拠点

富岡町は10日、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち夜の森地区を中心とした特定復興再生拠点区域(復興拠点)について、4月1日午前9時に避難指示を解除すると発表した。解除されるのは町の面積の約6%に相当する約3.9平方キロ。震災から12年を経て復興がさらに前進することが期待される。
政府、県、町が10日に協議し、放射線量の低減やインフラの整備など解除に必要な要件を満たしたとして合意した。山本育男町長は記者会見で「解除は本格復興の始まり。町民が安心して生活できるよう環境整備を継続していく」と語った。今後、政府の原子力災害対策本部(本部長・岸田文雄首相)が正式決定する。
解除される地区には震災前、1697世帯3886人の住民登録があった。町は避難指示の解除から5年後の居住人口について、約1600人を目標にしている。昨年4月から始まった準備宿泊には26世帯54人が登録している。
町の復興拠点の再生計画では、小良ケ浜、深谷両地区を通る主要道路や墓地などを点・線状の復興拠点と位置付けている。これらは除染などを進めることで9月以降の解除を予定している。また両地区の大部分は帰還困難区域の復興拠点外となっており、早期の避難指示解除が求められる。
町は原発事故で全町避難となった。JR富岡駅や町役場などを含む大部分は居住制限区域と避難指示解除準備区域とされ、2017年4月1日に避難指示が解除された。
復興拠点は6町村に設けられ、葛尾、大熊、双葉の3町村は昨年6~8月に解除された。浪江町は31日の解除が決まり、残る飯舘村は今春を目指している。
解除「桜まつり前に」
「早く帰りたいという町民の期待に応えたかった」。富岡町で10日開かれた特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を巡る記者会見で、山本育男町長は「2023年春」としていた解除の時期を年度初めの4月1日に決めた理由を説明した。
原発事故前、夜の森地区は閑静な住宅地として約3800人が生活していた。国道6号沿いには、飲食店やホームセンターなどがあり、買い物環境も充実していた。町が昨年11月に県内3カ所で開いた町政懇談会では、23年春とする目標に大きな異論はなく、「早く解除してほしい」との声が寄せられた。
しかし、震災から10年近く人の手が入らなかった地区のインフラ復旧などで課題も多く、「地区の将来像を示してほしい」との意見もあった。これに対し、町議会側も線量が高い場所の追加除染の実施を重視して議論を進め、「復興の取り組みを継続する」との確約を得たことを条件に、町に解除手続きを一任した。
夜の森地区には、観光名所の桜並木がある。今年の桜まつりは4月8、9日に設定され、山本町長は「桜まつり前の解除を目指す」と、4月上旬の解除に向け解除日の絞り込みに入った。水面下の調整の末、政府と県、町の3者による会合は3.11の前日に組まれた。
会見で、鈴木正晃副知事は「町民の皆さんが古里で生活できるよう、町全体の復興を加速させていく」、太田房江原子力災害現地対策本部長は、解除に至らない「拠点外」を念頭に「一日でも早く古里に帰れるよう、2020年代を最終目標に解除に着実に取り組んでいく」と述べた。山本町長は「町民の心のよりどころである桜が花開くよう、誰もが復興を実感できる地域にしていく」と誓った。