9首長、国際研究機構設置での人口増期待 12市町村本紙調査

 

 政府が4月に設立する福島国際研究教育機構(F―REI=エフレイ)について、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした12市町村長のうち、9市町村長が設置に伴う移住や交流人口の増加に期待を寄せていることが10日、福島民友新聞社の調査で分かった。県も「地域に根差した取り組み」を重視するよう求めており、エフレイが立地する浪江町をはじめとする双葉郡に加え、県内や全国への波及が期待される。

 調査ではエフレイに期待する点として「研究」「教育」「移住・交流人口の増加」「周辺環境の整備促進」「その他」の5項目から選択してもらい、理由とともに尋ねた。複数の項目を選択した首長も多いが、「移住・交流人口の増加」は9市町村長が選択した。

 飯舘村の杉岡誠村長は昼間人口の増加とともに「実証地として村内各地の利活用」、川俣町の藤原一二町長は「町内企業との連携や働く場の創出」に期待を寄せた。楢葉町の松本幸英町長は「この地で研究や開発に従事したいと思えるような、さまざまな受け皿づくりをすることが移住・定住につながる」と地元としての取り組みの重要性を指摘した。

 「教育」は7市町村長、「研究」は5市町長が選択した。「教育」を選んだ広野町の遠藤智町長は「人材の地産地消の実現を期待している」とし、ふたば未来学園の生徒との連携を求めた。大熊町の吉田淳町長は「その他」を選択、「日本の稼ぎ頭として成長するよう期待している」とした上で「まず国内で認知してもらう努力が必要」と注文を付けた。

 浪江町や田村市、富岡町などは「全て重要」とした。浪江町の吉田栄光町長は「町や周辺地域の活性化にとどまらず、エフレイで研究された技術が福島に投資され、東北、日本全体の経済に波及していくことを期待している。町として研究者や家族にとって住みよい町をつくることが使命」との考えを示した。

 7首長、風化を実感

 震災、原発事故から丸12年を迎える中、風化についても尋ね、7市町村長が「風化を実感している」と答えた。川内村の遠藤雄幸村長は「処理水の問題と同様、復興は『日本全体で考えていく課題』との認識が必要」と指摘した。

 風化を実感しているとしたのは南相馬、川俣、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾の7市町村。「報道などで取り上げられる機会が減り、復旧・復興が既に完了していると受け止められる」(南相馬市・門馬和夫市長)など、報道の減少で被災地への関心が薄れる状況に不安を示す意見が多かった。

 ただ「教訓として決して忘れてはならないが、繰り返しの報道で風評を助長してしまう懸念がある」(浪江町・吉田栄光町長)「『明と暗』の両方を広く伝えてほしい」(大熊町・吉田淳町長)との声もあった。

 「実感はない」としたのは富岡1町で、山本育男町長は「後世に原発事故の凄惨(せいさん)さと、復興する町の姿を伝えることで風化防止に取り組んでいく」と決意を示した。田村、広野、楢葉の3市町は「その他」を選択。楢葉町の松本幸英町長は「行政として忘れていくことと忘れてはならないことがある」とし、広野町の遠藤智町長は「これまでの軌跡を震災を知らない世代に語り継いでいくことは未来創造に向けて重要」と強調した。飯舘村は回答しなかった。