大切な人思い前へ 東日本大震災12年、各地で鎮魂の祈り

 
(写真上)東日本大震災から12年を迎え、海に向かい地震発生時刻に黙とうする市民ら=11日午後2時46分、相馬市原釜(写真下)献唱で鎮魂への祈りを込めた歌声を響かせた安積黎明高合唱団=福島市

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故は11日、2011年3月の発生から12年となり、県内各地で追悼行事が行われた。関連死を含め4166人が犠牲となる中、県民は12年分の思いを胸に刻み、13年目への一歩を踏み出した。

 発生から12年、本県の復興への歩みは着実に進んでいる。帰還困難区域に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)のうち、葛尾、大熊、双葉の3町村は昨年、避難指示が解除され、浪江町は31日、富岡町は4月1日の解除が決まった。飯舘村も大型連休ごろの解除を見込む。

 一方、第1原発で発生する処理水を巡っては、政府が「今年春から夏ごろ」を見込む海洋放出について国内外の理解が進んでいるとは言えない状況が続く。復興拠点外の帰還困難区域については、政府が国費で除染する「特定帰還居住区域」を設置して環境整備を進める。大熊、双葉両町で新年度に先行除染が始まるが、他の市町村を含め「2020年代」とする、希望する住民の帰還時期は見通せない。

 課題が山積する中で迎えた12度目の「3・11」。津波で多くの住民が犠牲となった相馬市原釜の慰霊碑前では、訪れた人たちが地震発生時刻の午後2時46分に黙とうをささげ、木の葉の舟を海に流した。

 福島市のパルセいいざかで執り行われた県主催の追悼復興祈念式では、両親を亡くした遺族代表の宮口公一さん(南相馬市)が「自助の大切さ」を、若者の言葉を述べた会津高の生徒3人が「次世代への伝承」を説いた。安積黎明高合唱団は「今、咲き誇る花たちよ」「楽譜を開けば野原に風が吹く」の2曲を献唱した。

 祈念式は昨年までの3年間、新型コロナウイルスの感染拡大で縮小を余儀なくされてきた。今年は4年ぶりに県外からも関係者を招いて行われ、岸田文雄首相や15カ国の大使ら324人が参列、徐々にコロナ禍前の日常に戻りつつある。

 原発事故の影響で今も2万7千人余りが避難生活を続ける。この日の県民の祈りは犠牲者への鎮魂とともに震災前の日常を取り戻し、さらなる復興・発展への願いも込められている。(飯沢賢一)