原発2訴訟、国の責任認めず 福島地裁、鹿島は賠償水準下回る

東京電力福島第1原発事故発生当時、南相馬市小高区と同市鹿島区に住んでいた住民が東電と国に慰謝料を求めた2件の訴訟の判決で、福島地裁の小川理佳裁判長は14日、東電に小高区の原告492人に対し約15億2900万円、鹿島区の原告269人に対し約2900万円の賠償を命じた。国への請求はいずれも棄却した。小高区訴訟では国の賠償基準「中間指針」の第5次追補と同様の賠償水準を認定する一方、鹿島区訴訟は指針の水準を下回る額を認定した。
小川裁判長は両訴訟の判決理由で、国の地震予測「長期評価」の信頼性を否定。その上で、試算した津波と実際の津波では規模や方角が異なり、「防潮堤などの津波対策を講じても事故は防げなかった」として、国の責任を否定した。
賠償額は、小高区の原告は第5次追補で示された賠償と同額の1人当たり280万円とした。一方、原発から30キロ圏外となる鹿島区の原告には「多くの住民が長期間にわたり避難を余儀なくされた実態はない。状況が大きく変容したとは認められない」と評価。個別の事情を踏まえ、1人当たり16万円の増額となった第5次追補を下回る、1人当たり10万円の増額が妥当とした。
判決後、原告側の弁護団が会見を開き、小高区の原告高野光二さん(70)は「国の責任が認められず残念だが、賠償額は訴えがほぼくみ取られた」と受け止めた。一方、賠償額が指針を下回った鹿島区の原告多田穣治さん(76)は「鹿島区の実態を全く理解していない。納得のいかない判決だ」と憤った。両訴訟の原告側代理人は、いずれも控訴を検討するとしている。
原子力規制庁は「いずれも原告らの国に対する請求が認められなかったと承知している」、東電は「今後、判決内容を精査して対応を検討していく」とそれぞれコメントした。