阿武隈急行経営改善へ新組織 29日に発足、利活用促進など議論

大規模な自然災害や新型コロナウイルスの影響で赤字基調が続く第三セクター・阿武隈急行(伊達市)の抜本的な経営改善に向け、福島、宮城両県や沿線自治体などによる「阿武隈急行線在り方検討会」が29日、発足する。2年程度をかけて赤字の抑制につながる取り組みを議論する。
検討事項には、JR只見線の復旧の際にも適用された「上下分離方式」を含む経営方式の変更なども盛り込まれており、路線存続につながる効果的な経営改善策を打ち出せるかどうかが焦点となる。
検討会は、両県と沿線自治体、福島交通、阿武隈急行のほか、学識経験者や実務経験者で構成する。オブザーバーとして国土交通省やJR東日本が加わる。検討項目は▽増収策▽経営方式変更▽民間人の常勤役員起用▽輸送モードの合理化▽運行ダイヤの合理化▽車両更新数▽経常経費の妥当性・経費削減策―など。
利活用の促進策や、施設の維持管理と運行事業者を分ける上下分離方式といった経営方式の変更策などを議論し、2年後をめどに方針を取りまとめる。実行可能な取り組みについては順次、沿線自治体一体で実施していくという。
阿武隈急行は両県と福島、伊達両市などの沿線自治体、福島交通などの出資で運営され、福島―槻木駅(宮城県柴田町)の54.9キロを結び、通勤や通学で利用されるなど地域交通の要となっている。
ただ東日本大震災や2019年の東日本台風など、相次ぐ自然災害で駅舎や線路などに甚大な被害が発生、復旧に多額の費用がかかった。さらに新型コロナの感染拡大で輸送人員が低迷したほか、施設の老朽化に伴う修繕費の増加も重なり、昨年度は10億1900万円の赤字を計上するなど、厳しい経営状況が続いている。
県内の地方路線を巡っては、収支の悪化が続いており、利活用促進に向けた議論が進む。阿武隈急行では将来にわたって路線を維持するためには抜本的な経営改善が不可欠と判断し、法定協議会「阿武隈急行線沿線地域公共交通協議会」の分科会として在り方検討会の設置が決まった。
15日に開かれた2月定例県議会の総括審査会で佐々木彰議員(自民、伊達市・伊達郡)の質問に久保克昌生活環境部長が答えた。