郡山4人死亡事故、被告に禁錮3年6月求刑 過失運転認める

 

 郡山市大平町の市道交差点で1月、乗用車を軽乗用車に衝突、炎上させて一家4人を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた福島市泉字長滝前の会社員の被告の男(25)の初公判は16日、地裁郡山支部(小野寺健太裁判官)で開かれ、被告は起訴内容を認め、検察側は禁錮3年6月を求刑、結審した。判決公判は4月10日午前10時から。

 検察側は冒頭陳述などで、被告が事故当日、郡山市内で知人からの連絡を待ちながら目的地を決めずに乗用車を運転していたと明かした。その上で実況見分の結果などから、事故当時は時速約60キロで市道を走行、約80メートル手前で交差点を認識できたにもかかわらず、交差点に気付いたのは約30メートル手前だったと指摘。右前方約22.3メートルの位置にいた軽乗用車に気付いて急ブレーキをかけたが、間に合わず衝突したとした。

 論告で検察側は「過失により4人の尊い命が一度に奪われており、被害結果は極めて重大」と主張。交差点を発見できた地点から衝突を避けることができた最終地点までは約3秒で、この間、前方を注視するなどの基本的な注意義務を怠ったとし「過失の程度は著しい」とした。

 弁護側は最終弁論で、無用な脇見運転はしておらず、法定速度を守るなど危険な運転態度をしていたとは言えないと主張。現場は一時停止線がほぼ消えていて標識などはなく、「事故を誘発するような危険な状態だった」などとし、執行猶予付き判決を求めた。

 上下黒のスーツ姿の被告は緊張した表情で入廷し、罪状認否では小野寺裁判官の質問にやや小さな声量で応じた。母親らの証人尋問と、被害者参加制度を利用して出廷した被害者遺族の意見陳述の際は、涙をこらえる様子も見せた。最終陳述では、声を震わせ「深くおわび申し上げます」と謝罪の言葉を述べた。

 遺族「4人との未来返して」

 裁判では、亡くなった橋本貢さん=当時(41)=と、美和さん=同(39)=の遺族が意見陳述し、悲しみや怒りが混在する胸の内を語った。

 美和さんと1歳違いという姉は、初めて通る道で一本道だと思っていたという被告の主張に「だからこそ注意して運転しなければならない」と話し、「(亡くなった)4人とつくるはずだった未来を返して」と訴えた。

 また、貢さんの姉は、貢さん一家は釣りやキャンプに出かけるなど仲が良かったといい、「4人の死に値するような刑を被告人に科してほしい」と言及した。

 傍聴席では、遺族ら約10人が4人の遺影を手に、涙ながらに裁判を見守った。