医聖生誕の地、足跡たどり交流 野口アフリカ賞受賞者

第4回野口英世アフリカ賞の受賞者らが17日、本県を訪れた。猪苗代町の野口英世記念館など、賞の由来となった野口英世ゆかりの地を訪れて足跡をたどるとともに本県の高校生らと交流した。
来県したのは、エイズ予防・治療に貢献した南アフリカのサリム・S・アブドゥル・カリム博士とカライシャ・アブドゥル・カリム博士の夫妻、団体受賞した「ギニア虫症撲滅プログラム」の代表受賞者アダム・ジョセフ・ウェイス氏ら。一行は同記念館のほか、会津若松市の鶴ケ城、野口英世青春館を視察。同市で開かれた高校生との意見交換会では、挑戦し続けることの大切さを伝えた。
野口英世アフリカ賞は2006年、当時の小泉純一郎首相がアフリカを訪問したことを契機に政府が創設した。アフリカでの感染症対策や公衆衛生推進に対する顕著な功績に贈っている。
未来の「英世」激励
17日に来県した野口英世アフリカ賞の受賞者たちは、会津若松市内で高校生との意見交換会に臨んだ。「失敗を恐れてはいけない。めげずに頑張ってほしい」「難題にぶつかることがあると思うが、この世界をもっと良いものにしてほしい」。多くの命を救ってきた研究者らは、未来を創る若者たちへ期待を込めてエールを送った。
「一つの問題の答えを追求して33年。失敗に失敗が重なったが、ようやく成功した。失敗しても突き進んでいくことが大切だ」。医学研究分野で共同受賞したサリム・S・アブドゥル・カリム博士とカライシャ・アブドゥル・カリム博士の夫妻(南アフリカ)は、アフリカのエイズウイルス(HIV)感染サイクルを研究。感染リスクの低下につなげたほか、新型コロナウイルス感染症対策でも功績を残している。
研究テーマを決めた理由を問われたサリム博士は、アフリカの若い女性のHIV罹患(りかん)率が高いと知ったことがきっかけだったとし、数々の失敗を経て成果が出た経緯を紹介。カライシャ博士は「人生は旅のようなもの。一つのことでなく、あれもこれもやってみて、自分の生きる道が見つかるのではないか」と話した。
医療活動分野で団体受賞した「ギニア虫症撲滅プログラム」は、1980年代にアフリカを中心に350万人が感染し、1億2000万人が感染リスクにさらされていたギニア虫症の予防法を地域に根付かせた。その結果、昨年の感染は13件と99.99%減少、寄生虫感染症としては歴史上初めて根絶の可能性が生まれている。
プログラム代表受賞者のアダム・ジョセフ・ウェイス氏(米国)は、大学卒業後にボランティア組織に加入するまで公衆衛生の分野を知らず、海外派遣された先でギニア虫症を知ったという。体験を踏まえ「人生にはたくさんの場面がある。興味のあること、質問すること、(興味の対象に)向かっていく力が必要だ」と指摘。「幸運なことに皆さんは勉強する機会に恵まれている。頂いた環境を大切にして勉強を深めることが必要」と鼓舞した。
意見交換会に参加したのは会津高1年生の9人。佐藤ゆきのさん(16)は「大きな成功の裏にたくさんの失敗があったという話が心に響いた。ちょっとしたことで落ち込んでいたけど、くじけずに努力しようと思うことができた」と話した。
親善大使に任命
県庁では、内堀雅雄知事が「野口博士の生誕の地を見ていただくことは大変意義深いことだ」と歓迎し、3人を本県と各国の交流、親善を図る国際交流特別親善大使に任命した。
内堀知事は世界中の人々の命を救う活動に努力を続けるそれぞれの取り組みに敬意を示したほか、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興支援への感謝を伝えた。
サリム博士とカライシャ博士夫妻は「野口博士が育った土地を巡れることは素晴らしい体験だ」などと語り、ウェイス氏は「福島を巡り、野口博士の精神を理解して不必要に病気に苦しむ人がいなくなるように努力していく」と応じた。
任命式には、米国カーターセンター上級副部長のメーガン・クレム・マーツ氏が一緒に訪れた。