二本松の檜物屋酒造店、国文化財へ 旧店蔵・仕込蔵2件を答申

国の文化審議会は17日、二本松市の檜物屋酒造店の「旧店蔵(文庫蔵)」「仕込蔵」の2件を登録有形文化財(建造物)にするよう永岡桂子文部科学相に答申した。ともに土蔵造り2階建てで、奥州街道の歴史的景観を形成していることが評価された。登録されれば、県内の登録有形文化財(建造物)は計266件となる。
旧店蔵は1874(明治7)年ごろに建てられた。外部から容易に侵入されないよう作られた奥州街道の枡形(ますがた)に面している。土蔵などに用いられる壁塗りの様式の一つ「海鼠(なまこ)壁」などのほか、内部には現代のシャッターのような「摺上戸(すりあげど)」を残す。
仕込蔵は1930(昭和5)年に建てられた奥行きのある建物で、周囲から見える街道側を寄棟(よせむね)造りの屋根にしている。土蔵の観音開きの扉の合わさる部分には、左右が組み合うよう段をつけてしっくいを塗る「掛子(かけご)塗」の技法を取り入れた窓枠がある。
答申28都道府県147件
文化審議会が登録有形文化財にするよう答申したのは、競走馬を生産する北海道新ひだか町のレースホース牧場(旧大日本競走馬生産)本厩舎(きゅうしゃ)など28都道府県の147件。完成から100年を迎える現役の道路橋で静岡市にある安倍川橋や、宮沢賢治の童話のモデルになったとされる岩手県花巻市の旧菊池家住宅西洋館の登録も求めた。
社長の斎藤さん「亡き父にいい報告」
檜物屋酒造店社長の斎藤一哉さん(51)は「地元松岡地区の入り口にあり、明治の頃から地域の人たちから親しまれた建物。先代社長の父が生前、登録を目指していて、父の夢がかない、いい報告ができる」と喜びを語った。
二本松市の三保恵一市長は「明治時代や昭和初期に建てられた土蔵が今も良い状態で存続しているのは代々管理を徹底したたまもの。歴史、文化的な価値も高く、末永く守ってもらいたい」とのコメントを発表した。