【守り手の現在地・被災地と県警<5>】「守る」から「創る」へ

特別警ら隊
東京電力福島第1原発事故から12年が経過しても、本県には人が自由に立ち入ることができない帰還困難区域が残されている。それらの地区を日々パトロールするのが、双葉署浪江分庁舎を中心に活動する特別警ら隊だ。隊員を束ねる隊長の菅野浩樹さん(52)は「隊員の経歴はそれぞれ異なるが、地域を思う心は一つ」と語る。
若手中心
特別警ら隊のメンバー46人の約8割は、応援のため全国の警察から派遣された特別出向者(愛称・ウルトラ警察隊)が占めている。若手警察官が中心で、かつて1995年の阪神大震災を経験した人もいれば「被災地のために何かできないか」と駆け付けた人もいる。出向者と本県採用の警察官との思いが融合し、自然と隊の士気は高くなっている。
特別出向は被災3県の治安確保のために設けられた期限付きの対応で、本県への出向は2012年から始まった。制度は何度も見直しが図られた上で現在に至る。特別出向者は年を重ねるごとに減少し、当初の350人から本年度は38人となっている。来年度以降の制度設計や派遣人数については、これから議論が深まる見通しだ。
県警が被災地で担う地域安全の役割は重くなることはあっても、軽くなることはない。避難指示が解除されて間もない各地の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の治安をどのように構築していくか。住民の帰還が進んだ地域の防犯力をいかにして高めていくか。地域に密着した活動を続けてきた警察官の努力を基盤とし、局面が変わる中でも「復興を治安面で支える」ことが求められている。
特別警ら隊長の菅野さんは「何ができるか、どうしたらいいか。地元の人たちと話し合いながら進めていくのがいいのではないか」と今後の県警と被災地の関わり方について話す。
次の10年
現場の声と同時に、県警としての被災地との向き合い方も改めて問われている。「被災地を『守る』のが発災後の10年だとしたら、現在の10年は県民の皆さんと一緒に『創る』という視点が重要になる」。そう強調する県警幹部。復興が進む被災地の未来に向けて住民、県民と共に歩んでいく。=おわり(この連載は小野原裕一、影山琢也、菅野篤司、国井貴宏が担当しました)