業者と癒着またか 県入札で贈収賄、福島県民「県職員管理甘い」

 
記者会見で陳謝する曳地部長(中央)ら=県庁

 県庁に再び衝撃が走った。県発注の土木事業の入札を巡り、県職員と須賀川市の土木会社社長が逮捕された贈収賄事件。2人を知る関係者からは「なぜ」と驚きの声が上がった。県では1月に別の贈収賄事件が発覚したばかり。県民からは「またか」「職員の管理が甘いのでは」という指摘も出た。

 県警によると、収賄の疑いで逮捕された県中流域下水道建設事務所建設課主任主査の男(59)と、贈賄の疑いで逮捕された赤羽組(須賀川市)社長の男(68)は、仕事上の関係で数年前に知り合ったとみられる。

 現場経験豊富な職員

 県によると、主任主査は1982年に採用された。設計金額を教え、現金を受け取ったとされる期間の2018年度からはあぶくま高原道路管理事務所で道路の維持管理、21年度からは県中流域下水道建設事務所で下水処理場の土木施設の設計などを担当していた。

 当時は両事務所とも主任主査が担当していない事務所発注の入札の設計金額を閲覧できた可能性があるという。現在はシステムを改修し、担当者以外は見ることができない状態になっている。

 勤務態度について県は「課題を整理しながら適正に業務を行っていた」とした。現場経験が豊富で、係員のサポートをするなど、係の取りまとめもしていたという。主任主査の近所に住む80代男性は「いい人そうに見えたが」と振り返った。

 商工会長務める社長

 社長は地元の商工会長を務めるなど「地域のリーダー」としての顔も持ち合わせていた。社長と交流がある60代男性は「気さくで、でしゃばらなくていい人。地域の縁の下の力持ち」と話した。地元住民らによると、会社は以前は経営が厳しかったが、東京電力福島第1原発事故後は除染事業で業績を回復し、利益を上げていたとみられる。

 関係者によると、社長は地元の須賀川建設業協同組合の理事長を務めていたが、最近になって、任期満了のタイミングで体調不良を理由に退任したという。ほかの複数の団体の役員も退任していて、関係者の一人は「今思うと(逮捕を)見越していたのだろうか」と話した。

 今年に入り、県職員2人が収賄容疑で逮捕されたことに、須賀川市の建設会社経営の40代男性は「職員の管理の甘さが見受けられる。県にはしっかりと対応してもらいたい」と指摘した。

 研修生かされず 土木部長陳謝

 職員の逮捕を受け、県土木部の曳地利光部長らが16日、県庁で記者会見し「県公共工事の入札の公正性に対する信頼を大きく揺るがす行為で誠に痛恨の極み。不祥事を二度と起こすことのないよう法令順守の徹底を図り、県民の信頼回復に努める」と陳謝した。

 県では今年1月に収賄容疑で職員が逮捕されたほか、土木部では昨年度、職員が利害関係のある企業から物品を受け取るなどの規則違反があった。このため土木部は、所属長を除く全職員約1200人に対してコンプライアンス研修を実施、不祥事の根絶に向けた取り組みを進めていた。

 県によると、この主任主査も研修の対象者だった。逮捕前日の15日に面談を受け、コンプライアンス順守や不祥事が起きた際のリスクについて「十分に理解している」との趣旨の発言があったが、事件に対する言及はなかったという。

 土木部は17日、再発防止に向け、出先機関の長を集めた緊急の会議を開く。曳地部長は「現在の職員面談を続けながら、繰り返し意識付けを行い、服務規律保持や再発防止に全力で取り組む」と語った。