絶滅危惧種「ヨコグラノキ」福島県初確認 牧野富太郎発見の木

 
本県で初めて見つかったヨコグラノキ=6月27日、飯舘村(伊賀和子さん提供)

 植物学者・牧野富太郎ゆかりの樹木で、自生地の多くの都府県で絶滅危惧種に挙げられているヨコグラノキが本県で初めて確認された。東北でも40年ぶりだという。専門家は本県で新たに自生樹木が発見されるのは極めて珍しく、特殊な環境に生育する種であることから環境保全の必要性を指摘している。

 ヨコグラノキはクロウメモドキ科ヨコグラノキ属の植物。県植物研究会の伊賀和子さん(相馬市)が6月27日、飯舘村の山中で花を咲かせたヨコグラノキを発見した。

 ヨコグラノキは、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった牧野富太郎博士が1884年、故郷である高知県の横倉山で見つけたことで知られる。14年後に新種発表され、学名は1927年に「植物学雑誌」で発表された。

 その後、ほかの四国各県や神奈川県でも見つかり、宮城県白石市で発見された群落は北限地帯とされ、42年に国の特別天然記念物に指定された。82年には、白石市の自生地の数キロ北西にある同県七ケ宿町でも見つかった。

 県植物研究会の薄葉満会長は「東京都や神奈川県から宮城県の間での確認はなく、長い間、離れた場所に不連続に分布している植物とされていたが、まとまった群落として本県で見つかったことには大きな意味がある」としている。

 県内の植物調査など保全や管理を研究している福島大共生システム理工学類の黒沢高秀教授は「本県も植物の研究が進んでおり、新たに自生樹木が発見されるのは驚き。特殊な地形・地質の場所に生育するため、自生地の環境と共に大切にしたい」と話す。

 11日に研究会有志で行った調査では、果実をつけた成木で高さ15~20メートル程度のものが15本、高さ数メートルのものが2本見つかった。崖地のため胸高で直径計測できたのは1本だけで、約35~40センチだった。伊賀さんによると、数本ずつ点在する形で確認されており、分布面積は広いという。詳細や幼木については「落葉が始まるころの調査で徐々に明らかにしていきたい」としている。