処理水、24日午後1時に海洋放出 福島県、トリチウム監視強化へ

東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出を巡り、政府と東電は24日午後1時にも放出を始める。同日午前にも放出に向けた一連の準備が整い、気象・海象条件を踏まえて最終的に放出開始のタイミングを決める。放出を前に県は23日、県庁で関係会議を開催、周辺海域で処理水に含まれる放射性物質トリチウムのモニタリング(監視)を強化する方針を示した。
岸田文雄首相が22日、処理水の海洋放出の24日開始を表明したことを受け、東電は22日夜に準備作業に着手した。約1200トンの海水で薄めた約1トンの処理水を、放水設備の「立て坑」のうち、上流水槽に移送。水槽から約7リットルの水を採取し、計算通りに処理水が薄まっているかどうかや、トリチウム濃度が国の基準の40分の1となる1リットル当たり1500ベクレル未満になっているかどうかなどを確認した。東電関係者によると、放出予定の処理水について測定した結果、トリチウム濃度に問題はないという。
東電は周辺海域のモニタリングを24日中に始めたい考えで、試料となる海水採取の安全面なども考慮し、開始時刻を検討しているもようだ。
放出を控え、県は原発安全確保技術検討会と、県廃炉安全監視協議会環境モニタリング評価部会を県庁で開いた。検討会では、東電が22日に示した本年度の放出計画の説明を受けた。東電は本年度、全4回にわたり計約3万1200トンの処理水を海に放出する。1日当たりの放出量は約460トンを見込む。トリチウムの総量は約5兆ベクレルで、年間放出量の上限とする約22兆ベクレルを大幅に下回る。
専門委員からは、2段階に分けた放出手順など安全対策を評価する声があった一方、「放出がいよいよ始まるタイミングで計画を提示するのは遅い」との指摘もあった。
東電福島第1廃炉推進カンパニーの松本純一処理水対策責任者は「放出の期日が定まらないと公表が難しいと考えていた」と説明。次年度以降の放出計画については、事前に考え方などを説明する機会を設ける考えを示した。
また県は評価部会で、放出を受けて強化するモニタリングの計画を公表。トリチウム濃度を速やかに確認するための調査を9測点で毎月、実施するという。県は試料採取から3~4日後に県のホームページなどで結果を公表する。
相双漁協通常通り操業 いわきも
相馬双葉漁協は23日、処理水の海洋放出が始まる24日の操業について、通常通り行うことを決めた。いわき市漁協も通常通り操業するとしている。
相双漁協は23日、相馬市の同漁協で拡大操業検討委員会を開き、24日の放出開始が報告された。出席者からは「政府は漁業継続支援などに計800億円の基金を確保したが、本当に風評被害対策が実施されるかどうか疑問だ」「すでに流通している水産物の在庫などの今後の状況がどうなるか不安が残る」などの懸念の声が上がった。今野智光組合長は席上、「処理水放出後も組合一丸となって操業に取り組んでいく」と述べた。
処理水の海洋放出を巡り、いわき市漁協は現時点で今後の対応を検討する場を設ける予定はないとしているが、職員は「市漁協としてあす(24日)以降も変わらず取り組んでいく」とした。
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