放出「ミス防止」随所に 処理水施設ルポ、音で感じた廃炉への歩み

「ザバーッ、ザバーッ」。地上から目で見ることはできないが、海面に打ち付ける水の音が確かな廃炉の進展を告げていた。政府と東京電力が、福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を始めてから4日目を迎えた27日、第1原発を取材した。
この音の正体は、24日午後1時3分から海への放出が始まった放射性物質トリチウムを含む処理水だ。第1原発には17日現在、約134万トンの処理水が1000基を超えるタンクに保管されている。大量の海水で薄められた処理水は、海側にある放水設備の「上流水槽」に移送された後、海底トンネルの起点となる「下流水槽」に流れ込み、沖合約1キロ先から海に放出される。
記者は約1年前、海底トンネルの工事現場を取材した。実際に放出が始まったことで「下流水槽へと水が流れる様子を視察できるのでは」との期待はあったが、セキュリティーの関係からその様子は非公開。音のみでしか「放出の現場」を感じることはできなかった。
処理水の放出を巡っては新たな風評への懸念から、反対を堅持していた県漁連が「廃炉の完遂とその時点で漁業のなりわいの継続が確認されて『理解』は完了し、約束は果たされたことになる」との見解を示す。
東電は、処理水の移送配管に遮断弁を設置したり、海域モニタリング(監視)で規定を上回るトリチウム濃度が検出された際には放出を停止したりするなどの運用態勢を構築。あらゆるミスが信頼失墜につながるとの認識の表れでもある。
30~40年かかるとされる廃炉と同様、東電は2051年までに全ての処理水の処分を目指す。東電が処理水関連の情報をまとめている「処理水ポータルサイト」によると、27日午後6時現在、総量の0.1%に当たる1438トンを放出した。
廃炉に処理水放出という新たな工程が加わって4日目。東電の担当者は何度もある言葉を繰り返した。
「手順通りに着実に一つ一つの作業を行う。正しい情報を分かりやすく発信していく」。初心を忘れない姿勢を貫くからこそ、安全で安心な廃炉作業は成り立つ。(報道部・折笠善昭)
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