「帰還の呼び水に」 双葉町長が町内に自宅再建、9月から新生活

 
双葉町に自宅を再建した伊沢町長

 双葉町の伊沢史朗町長(65)は、町内に自宅を再建し、9月1日から古里の新しい"わが家"で生活を再開させる。東京電力福島第1原発事故による全町避難から、住民帰還に向けて町政のかじを切った首長本人が帰還する姿を見せ、「町職員や町民が帰る呼び水にしたい」と語る。

 同町新山地区に生まれ、獣医師として家業を継いだ。2003年から町議を4期務め、東日本大震災後の13年に町長に就いた。原発事故後は役場機能が置かれた埼玉県加須市やいわき市などに身を寄せ、今回で15回目の引っ越しになる。元の自宅は震災で半壊となり、野生動物に荒らされたため解体し、家を建て直した。

 昨年8月30日、JR双葉駅周辺の特定復興再生拠点区域(復興拠点)で避難指示が解除された。役場機能が町内に帰還したことに伴い、この1年、避難先のいわき市から単身、町内のビジネスホテルの1室に住み込み、公務を続けている。

 伊沢氏は「引っ越しはこれで最後。ここがついのすみかになるだろう。そういう意味で少しはほっとできる」と話す。妻と2人で暮らし、休日には地域住民と近くの前田川沿いの除草に汗を流しながら、双葉に再び根を下ろすつもりだ。