大野病院後継、現地建て替え 福島県素案、開院29年度以降

 

 東京電力福島第1原発事故に伴い休止している県立大野病院(大熊町)の後継病院について、県は30日、現在の大野病院を解体した上で現地で建て替え、2029年度以降の開院を目指す方針を示した。大熊町が示した二つの候補地のうち、常磐道大熊インターチェンジ(IC)とJR大野駅に近く交通の利便性が高いことや病院の敷地を確保しやすい点などから県が判断した。

 福島市で同日開かれた後継医療機関の在り方を検討する会議で県病院局が基本構想の素案を示した。設置場所の選定では、町が大野病院敷地と旧町役場付近の2案を県に提案。後継病院は将来的に病床を大野病院(150床)を上回る約250床にまで増やすことを想定し、敷地として隣接する町有地を活用できる点も考慮した。後継病院の敷地面積は大野病院よりも約7千平方メートル広い、計約3万3千平方メートルを確保できる見通しだ。

 また、県は現在の大野病院の建物について長期にわたって休止していたことなどによる損傷が大きいほか、免震構造ではないため大規模改修には建て替えと同程度の費用がかかると試算。病院の特性に合わせて建て替える方が効率的だと判断した。

 後継病院には、内科や外科、総合診療科、人工透析、救急科など20診療科のほか、感染症に対応した病床を設ける。開院当初の病床数は100床程度で、双葉郡内の人口増加などに合わせて段階的に増床していく方針だ。

 将来的に必要と想定される約250床は、35年ごろの郡内の人口推計を基にしており、会議に出席した吉田淳大熊、伊沢史朗双葉の両町長からは住民の帰還促進につなげるため、より迅速に病床を増やしてほしいとの声が上がった。また、高齢者の受診が多くなることを想定した巡回バスなど病院への交通手段確保、医療人材確保に向けた生活環境を整備する必要性を指摘する声もあった。

 県は10月ごろを見込む次回会合で基本構想を取りまとめ、年度内に基本計画の策定に着手したい考えだ。