【未来この手で】第2部・七転び八起き 念願、避難先でダルマ市

双葉町消防団第2分団の福田一治、中谷祥久らを中心とした有志の団体「夢ふたば人」は2012年1月21日、いわき市勿来地区の南台仮設住宅で双葉ダルマ市を開いた。江戸時代から双葉町で行われてきた伝統行事が東京電力福島第1原発事故を乗り越え、避難先ながらも途絶えることなく継続された瞬間だった。
開催に向け汗を流してきた福田は「何が苦労したかって、全部で苦労したな」と振り返る。人材派遣業の福田工業を経営し、町商工会青年部員として原発事故前のダルマ市に関わってきたが、全ての実務を経験したわけではなかった。かつてのダルマ市に参加していた双葉地方の業者、いわき市に避難してきた後に知り合った支援団体の協力なども得て準備を進めた。
日程一つ見ても、苦闘の跡がにじみ出ていた。本来のダルマ市は、1月の第2週に2日間にわたり行われるのが通例だった。準備の状況などを考え、21日に1日だけ開催することにしていたのだ。誰にやれと言われたわけでもなく、自分たちの意思で時間と労力、そして私財も投じて取り組んできた「夢ふたば人」のメンバーは、開催当日の会場を一目見て、その努力が報われたことを知った。
町民再会の場所に
みぞれ降り散る肌寒い天候にもかかわらず、多くの双葉町民の姿があった。原発事故から10カ月が経過する中、県内外に避難を余儀なくされ、お互いになかなか会う機会がなかった人たちが「ダルマ市の会場で会おう」と約束して集まっていたのだ。中谷は「お年寄り同士が、涙ながらに再会を喜んでいる場面が印象的だった」と語る。
福田は、当時の中学生から次のような話を聞いていた。「口コミで知ってとりあえず、友達と南台仮設を待ち合わせ場所にした。仮設の入り口に行くと、双葉ダルマ市の横断幕が貼ってあってビックリした。本当にやってる、みんなに会えるんだと思った」。だるまの販売や奉納神楽、夢ふたば人のメンバーによる商売繁盛や無病息災を祈願するダルマみこし。来場者はそれぞれに、避難生活を忘れるひとときを過ごした。「やって良かったな」。福田たちはしみじみとそう思った。
ダルマ市の開催を契機として、福田が「ガラガラで閑古鳥が『カッコー』と鳴いていた」と表現していた南台仮設の雰囲気も変わった。双葉町民の入居が相次ぎ、空室はなくなった。南台の仮設住宅は、県内有数の双葉町民のコミュニティーとなっていった。
勢いがついた夢ふたば人のメンバーらはその年の夏、南台の仮設住宅で通常は1回のはずの盆踊りを2回も行ったのだった。(文中敬称略)
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