先達山の一部「はげ山」化...福島市、山地メガソーラーに「NO」

 
むき出しの山肌が市街地からも確認できる先達山のメガソーラー建設地

 福島市は31日、災害発生が危惧され、景観が損なわれる山地への大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を「これ以上望まない」と宣言した。県から林地開発許可を得るなど必要な手続きを経て進行している建設を止めることは難しいが、今後の設置計画に対しては「市民と連携し、実現しないよう強く働きかける」と反対姿勢を明確化した。

福島市内のメガソーラー

 市内のメガソーラーは8月現在で建設中を含め26施設あり、場所は【地図】の通り。出力は計332メガワットに上り、東北電力原町火力発電所の6分の1に相当する電力を生み出す力がある。

 一方、このうち20施設は県外事業者が主体で、売電収益による地元の経済効果は限られる。市西部の吾妻山麓では開発が進み、豪雨による土砂流出や景観悪化の弊害も指摘される。

 高湯温泉に近い同市在庭坂の先達山は約60ヘクタールを造成する計画で広範囲にわたり森林が伐採され、春ごろから山肌がむき出しとなって「はげ山」と化した。中心市街地から肉眼で確認できるほど目立つようになり、市環境課に多くの問い合わせが寄せられている。

 高湯温泉観光協会の遠藤淳一会長(68)も自身が経営する旅館の宿泊客から「美しい山並みの手前に見えるのがはげ山になってしまった」と失望の声が聞かれるといい、「再生可能エネルギーだからと言って、何でも歓迎するべきではなかった」と語気を強める。県自然環境保全審議会の委員も務め、2019年9月に当時まだ計画段階だった先達山のメガソーラーなどを念頭に「大規模な開発は許可すべきか慎重に検討した方がいい」と県に意見していた。再エネ導入を促進する県にも「アクセルが強すぎたので、環境保全のためのブレーキも意識してほしい」と注文付けた。

 福島市吾妻地区の農産物直売所を同日訪れた郡山市の伊藤富治さん(71)、則子さん(67)夫婦は「美しい景観がもったいない。福島市だけでなく、県全体がソーラーパネルだらけになっている」と話した。

 福島市は19年10月に太陽光発電施設の設置に関するガイドラインを設け、地域住民との協調や景観維持への配慮などを事業者に求めていた。同日の記者会見で宣言を発表した木幡浩市長は「事前協議で想定できなかった面もあり、吾妻山の中腹が露出してしまった。今後は地域と共存できる再エネをこれまで以上に推進したい」と述べた。

 メガソーラーを巡っては、大玉村が19年6月に県内で初めて設置を「望まない」と宣言している。