救急、物流に好影響期待 博士峠バイパス9月10日開通

会津美里町と昭和村を結ぶ国道401号博士峠バイパス(延長7.5キロ)が10日、約6年の工事期間を経て開通する。狭くてカーブが多く、降雪期間は通行止めとなっていた交通難所が改善される。人の往来、救急、物流―。新たな交通の動脈に対する地域の期待は大きい。
仕入れ便利に
開通が間近となった31日、同バイパスにある「博士トンネル」の内部が報道機関に公開された。県の担当者が、町村の境を表す真新しい案内板の前などで説明を行った。
いくつのものカーブを抱えている現在の博士峠。道幅は狭く、通行可能な夏でも生い茂る草木が道幅を一層狭く見せており、通行には注意が必要だった。「仕入れが便利になるよ」。昭和村の日用品小売り店「ハゾメ」の羽染由美子さん(69)は開通を待ちわびる。
店は週に2、3回、仕入れのために村と会津若松市を往復しなければならない。いつも午前5時に出発。峠が通れない冬期間は、柳津町方面への遠回りを余儀なくされている。
羽染さんは「便利になって村から出る人も増えるだろうけど、来てくれる人も増えるはず。たくさんの人に昭和に来てほしいね」とにぎわう村内を思い描く。
30分以上短縮
「命のトンネル」。博士トンネルをそう呼ぶ村民もいる。開通で昭和村や隣接町村の救急搬送の時間短縮や、災害対応の迅速化が見込まれるためだ。会津若松地方消防本部によると、会津美里消防署(会津美里町)から、博士トンネルの昭和村側に位置する同村小野川地区へは、冬季は会津坂下町や金山町を通って片道1時間以上を要しているが、バイパス開通によって30分以上短縮できる見通しだ。また、急カーブの多い道を通る必要がないため、搬送時の傷病者のストレス軽減にもつながる。
特産品追い風
特産のカスミソウの栽培にも好影響を与えそうだ。JA会津よつばかすみ草部会長の立川幸一さん(63)は「開通は悲願だった」と歓迎する。
一部のカスミソウ栽培農家は長い出荷期間を確保するため、昭和村よりも収穫が早まる会津美里町や会津若松市北会津地区など会津盆地でも栽培している。こうした農家は昭和村と会津盆地周辺の双方に自宅があり、両地域を往復する生産者もいるという。立川さんは「会津盆地と昭和村の行き来がしやすくなるため、盆地での栽培を希望する農家が増えて生産量が伸びる可能性もある」と話した。
収穫したカスミソウを昭和村の集荷場である「雪室」に運ぶトラックは険しい峠道を毎日のように往復している。道路状況によっては生産農家が待機する時間が発生するなど作業に支障が出る場合もあるため、立川会長は「開通によって安全性が高まれば、円滑な輸送にもつながる」と胸を膨らませた。
国道401号博士峠バイパス 延長7.5キロ。2014年度に事業着手、17年度に工事着手した。約4.5キロのトンネルは、県が管理するトンネルとしては県内最長となる。21年7月にトンネルが貫通し、22年度にトンネル本体工事が完了した。県によると、昭和村―会津若松市の所要時間は、冬以外の期間で9分、冬には39分の短縮が見込まれる。開通は10日午後3時。
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