処理水放出1週間 本県沖底引き網漁再開、常磐もの風評影響なし

東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出開始後、初めてとなる本県沖での底引き網漁が1日、2カ月の休漁期間を経て再開された。処理水放出による風評が懸念される中、県水産海洋研究センターは、海洋放出開始後1週間の魚の平均単価に大きな変動はなかったと発表。各地の漁港ではこの日も、ほとんどの魚種が例年通りの価格帯で取引された。
相馬市の松川浦漁港には午前11時半すぎ、相馬双葉漁協所属の沖合底引き網船20隻が次々に帰港、ヤナギダコ、スルメイカ、ミギガレイ、マサバなど、昨季初日を上回る19・8トンが水揚げされた。ほとんどの魚種はほぼ通常通りの価格帯で取引されたが、オキナマコが昨年同期に比べて大幅に値を下げた。同漁協によると、中国による日本産海産物の全面禁輸などの影響を受けたとみられるという。
同漁協所属の沖合底引き網船は、原発事故前の2010年に比べ2割程度まで落ち込んだ漁獲量を段階的に戻す計画に取り組んでおり、来年6月までの漁期で10年の55%に当たる2610トンの水揚げを目指す。目標達成に向けて、今季は原発事故後見送られていた宮城県沖での操業を再開させる。
原釜機船底曳船船頭会の高橋英智会長(60)は「処理水の放出が始まっても、やるべきことは変わらない。水揚げ拡大に向けて進み続ける」と話した。
このほか、いわき市漁協では沖合底引き網船と小型底引き網船21隻が出漁し、マアジやサバなどを中心に約5・6トンを水揚げ。小名浜機船底曳網漁協は3隻が出港し、マイカやメヒカリなど約1トンを漁獲した。それぞれの港の市場の取引でも、例年と比べて極端な価格の変動はなかった。
魚の平均単価、変動なく
県水産海洋研究センターが1日発表した漁海況速報によると、処理水の海洋放出が始まった8月24~30日に県内3漁協の市場で取引された魚の平均単価は前回調査(8月9~23日)と比較して大きな変動はなく、同センターは「風評に起因するような影響は確認されなかった」との見解を示した。
「常磐もの」を代表するヒラメ(活魚)の1キロ当たりの平均単価は、相馬双葉漁協の固定式刺し網漁で取れたもので前回調査は2314円だったが、今回は1804円と下がった。一方、船引き網漁のシラスは前回の1キロ当たり840円から955円と上昇した。
調査結果について石田敏則所長は「価格の変動は取引量などによる影響の範囲内と考えられ、大きな変化はみられなかった」との見方を示し「引き続き推移を見守っていきたい」とした。
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