飯坂ゲーマーに世界が注目、国際大会優勝 翔選手共同生活で腕磨く

 
(写真上)自室でゲームの腕を磨く翔選手(写真下)国際大会で優勝した翔選手(右)。拝田社長と共に福島市飯坂町を拠点に活動する

 福島市に「世界一のプロゲーマー」が誕生した。同市飯坂町を拠点に活動するプロゲームチーム「FUKUSHIMA IBUSHIGIN(フクシマ イブシギン)」の翔(かける)選手(25)は、8月にサウジアラビアで開かれた格闘ゲームの国際大会で優勝し、国内外のトップ選手から注目される存在となった。「勝ち続ける選手でありたい」。「福島」の名を背負い世界の強豪と戦う翔選手は、温泉街にたたずむ一軒家で日々腕を磨いている。

 国際大会「勝ち続ける」

 翔選手やスタッフら計4人が、木造2階建ての5DKで共同生活している。チームを運営するのは同市のIT会社「アスピロンド」。拝田遼平社長(33)が、かつて猪苗代町の旅館で働いていた縁などから拠点を東京都からここに移した。

 翔選手がプレーするのは、格闘ゲームシリーズの最新作「ストリートファイター6」。日本時間8月11~14日にサウジアラビアで開かれた国際大会「Gamers8 2023」を制し、優勝賞金40万ドル(約5800万円)を手にした。

 愛知県出身の翔選手は2020年にチームに加入。仕事を辞めて今年4月からプロゲーマーになったばかりで、いきなり優勝という結果を出し「ちょっと出来すぎだな」とはにかむ。

 小さい頃からゲームが大好きだった。学校に行かず家に引きこもりがちだったが、中学2年の時、ゲームを通じて仲良くなった友人に会いに東京都に行くようになった。そこで格闘ゲームのコミュニティーに出合った。「自分に自信がなかったが、ゲームだったら人生を変えられるんじゃないかと思った」。好きなことを突き詰め、仕事にできていることを喜ぶ。

 昼過ぎに起き、夕方から世界の強豪と対戦しながら練習を積み、その様子をインターネットで配信する生活を送る。温泉に入ったり、モモを食べたりしてリラックスしながら画面に向かう。優勝賞金の使い道は未定だが、「応援してくれる人に恩返ししたい」と、配信設備の強化に充てることを検討中だ。

 チームには、「スト6」以外のゲームも含めて計15人の選手が在籍する。飯坂温泉は「温泉むすめ」の活用などサブカルチャーを通じた活性化に取り組んでおり、拝田社長は「ゲームを加えた一つの観光コンテンツとして発信し、地域を盛り上げたい」と地域貢献への思いを語る。

 世界が注目する翔選手、そして地域に根差すチームの活躍に今後も目が離せない。(水野智史)

 eスポーツ県内も人気

 コンピューターゲームは、その腕を競うスポーツ「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」として定着し、若者を中心に人気を集める。プロチームにはスポンサーが付くなど、多くの企業が参入。日本eスポーツ白書によると、2021年のeスポーツの国内市場は前年比約15%増の78・4億円で、25年には約180億円まで成長するとの予測もある。

 県内でも多くの人がeスポーツに取り組んでいる。県eスポーツ推進協議会の中河西宏樹代表(41)は、翔選手の活躍を「単純にうれしい。他選手の希望の光にもなる。10月には郡山市で『スト6』の対戦会を予定しており、盛り上がるのではないか」と期待を口にした。