新潟エリアと結ぶプレミアム旅 会津若松への「相乗効果」模索

 
海底貯蔵酒を引き上げ、試飲する市の関係者(写真上)小木港海底に沈められた会津の日本酒。波に揺られた日本酒の味わいにはプレミアム感が上乗せされる(写真下)(会津・佐渡広域観光推進協議会提供)

 会津若松市が観光誘客に向け、新潟エリアとの連携を強化している。観光振興の連携協定を結ぶ新潟県佐渡市とは、佐渡金山の世界遺産登録を見据えた観光ルート構築などの取り組みが本年度に入って本格化し、今月にモニターツアーを予定する。一方で7月には新潟市とも同様の協定を結んだ。会津、越後、佐渡―。古くから人や物の往来が盛んだった歴史的なつながりを土台に、相乗効果で誘客のてこ入れを図る。

 海底貯蔵酒

 佐渡市の小木港に6月のある日の午後、会津若松市観光課の担当者の姿があった。傍らにはケースに入った会津の日本酒が並ぶ。ケースがボートで海に運び出されると、ダイバーが日本酒を海底に運び、流されないようしっかりと固定した。海水温で保存し、海に揺られて熟成させた日本酒は、会津と佐渡を巡る周遊型旅行商品の目玉の一つ「海底貯蔵酒」だ。

 会津若松、佐渡の両市が進めているのは、ぜいたく感のある高級志向の旅。海底貯蔵酒は海中の波の微振動によってまろやかな味わいになるとされ、伊豆大島(東京都)や葉山町(神奈川県)など海を抱える地域で観光メニューの一つとなっている。

 7月下旬に引き上げられた海底貯蔵酒を試飲した会津若松市観光課の宗像舞さん(24)は「海底に沈めたというプレミアム感があり、おいしく感じた」と話す。気温10度に保たれている佐渡金山の坑道での熟成も試行しているほか、若松―佐渡間の移動はヘリコプターが検討されるなど特別感を追求、今月予定するモニターツアーも富裕層向けだ。

 新潟市との連携では、日本酒、みその醸造文化を共通項とした誘客プロモーションを計画。2025年大阪・関西万博での共同出展に向けた検討が進む。

 人流の魅力

 会津若松市が新潟との連携を強める背景には、新潟を中継地点とした人流の魅力がある。新型コロナウイルス感染拡大前の新潟空港大阪線の利用者数は、15年度の約42万人が19年度には約56万人に増加。新型コロナの影響を大きく受けた20年度は約16万人に落ち込んだが、22年度は約44万人にまで回復した。札幌、福岡両線も同様に回復傾向だ。

 市によると、関西方面から新潟空港を経由して会津若松市を訪れる観光客(宿泊者)が近年、増加しており、新型コロナ禍前は14年から19年で約5倍に増えたという。

 訪日客競争

 新潟空港には国内線だけではなく、台湾からの直行便も就航する。新型コロナ対策による入国規制がなくなり、国内ではインバウンド(訪日客)の獲得競争が激化。首都圏に降り立つ観光客は全国各地に分散する一方、新潟に到着する観光客は会津に呼び込みやすいというメリットがある。

 会津若松市の経済関係者は「これから先、間違いなく人口が減少していく中で消費を喚起するには、観光交流人口を増やすしか道はない」と指摘する。会津側は新潟空港を中継地点とした観光客の流入に、新潟側は会津の侍文化の集客力に期待をかける。新型コロナ禍を経て、団体旅行から個人旅行への移行が進みつつある中、相乗効果に光明を見いだそうとしている。(若松支社・阿部裕樹)