楢葉で持続可能な農業 避難指示解除8年、6次化商品開発推進

楢葉町は5日、東京電力福島第1原発事故による全町での避難指示が2015年に解除されてから丸8年を迎えた。松本幸英町長は福島民友新聞社の取材に、4月に完成した特産品開発センターをフル活用し、新製品を販売した利益の一部を生産者に還元することで持続可能な農業と6次化商品の開発を積極的に進めていく考えを示した。
特産品加工センターは前原地区に整備された拠点でカット野菜や総菜、米粉、ジュース、ジャムなど多様な製品を加工することができる。町は収益性が高い作物として、町内でサツマイモの振興を図っており、既にセンターを活用した製品の第1号として楢葉産干し芋の販売が始まっている。
松本町長は「サツマイモは売り先を確保できる見通しが立っており、来年度には原材料のサツマイモを持ち込んだ生産者に対し、販売利益の一部の還元を考えている」と語った。
町の特産品であるユズについても、新商品の「ユズポン酢」の開発を進める方向で調整している。ポン酢の製造・販売で全国的に知られている高知県馬路村への視察などを通じて、競争力の高いユズポン酢の生産を目指す。松本町長は「復興のアイデアは、どんどん外に求めていく。味に加えて、瓶やデザインにもこだわりたい」としている。
松本幸英町長に聞く 野球やラグビー、合宿受け入れ推進
松本幸英町長に、楢葉町の復興の現状やまちづくりの課題などを聞いた。
―町内では県道広野小高線(通称・浜街道)の整備区間が開通するなどの動きがあった。この1年から地域再生をどうみるか。
「東日本大震災で被災した町の施設で最後まで残っていた歴史資料館が、東大総合研究博物館との連携ミュージアム『大地とまちのタイムライン』として再開できた。ハード面はほぼ完了形に近づいており、ソフト面をより充実させたい」
―新産業の創出にはどのように取り組むか。
「波倉地区の(環境省が運用する除染廃棄物の)セメント固形化処理施設などが来年度中には解体を終える計画だ。新産業創出ゾーンとして整備していく考えで、新エネルギーなどを担う企業の誘致を想定している」
―スポーツを通じた交流人口の拡大については。
「中学生世代を中心とした硬式野球『ポニーリーグ』のアジア大会の開催などを実現し、地域振興につながった。インターハイの男子サッカーの定期開催も決定しており、野球やラグビーなどの合宿の受け入れにも引き続き力を入れていく」
―コミュニティー再生の分野では地域活動拠点施設「まざらっせ」がオープンした。今後の展望を。
「移住者と震災前から住んでいる地域住民との交流の場として活用したい。地域の動きを行政が支援するのが理想の形だ。女性や高齢者ら幅広い層の意見を反映させたまちづくりに取り組んでいきたい」
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