トリチウム、魚に蓄積なし 03~12年度太平洋 青森、岩手で採取

福島大環境放射能研究所の高田兵衛准教授(46)=海洋化学=は6日、青森、岩手両県の太平洋沿岸で採取された海水と魚介類に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を調べた結果、魚介類にはトリチウムが蓄積しないとの研究内容を発表した。トリチウムは生物の体内で蓄積されないことは知られているが、科学的に改めて評価した形だ。
同大の定例記者会見で発表した高田氏は、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に伴う影響についても「同じトリチウムなので、基本的に海洋生物への蓄積はないと考えている」とした。同大は2021年度から本県沿岸で魚介類と海水を採取し、トリチウムとの関係を調べている。
高田氏らの研究チームは、海洋生物環境研究所(東京)が採取した03~12年度のデータを活用。日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が06年に試運転を始めて海にトリチウムを放出した前後の、海水と魚介類のトリチウム濃度の関係を分析した。
魚介類への蓄積については、数値が1より大きいほど体内に蓄積していることを示す濃度比(濃縮係数)を調べた。ヒラメなど9魚種の体に含まれる水分のトリチウム濃度は0.84~1.3だった一方、セシウムは32.5~74.4で、トリチウムは蓄積せず、セシウムは蓄積しやすいことが分かった。体の組織に取り込まれた「有機結合型トリチウム」についても同様の傾向だとしている。
また海水中と魚介類中のトリチウムとセシウムの濃度変化も調査。トリチウムは、いずれも再処理工場の試運転の影響で上昇したが、すぐに試験前の値に戻り、原発事故の影響はみられなかった。セシウムは、いずれも試運転の影響はみられず、原発事故で海水は最大1リットル当たり0.37ベクレル、魚介類は最大1キロ当たり11ベクレルまで上昇したが、その後は緩やかに減少した。
高田氏は「(福島第1原発で行われている)海洋放出の影響を見る時の一つの比較材料となる」としている。研究結果は、日本海洋学会の英文誌「ジャーナル オブ オーシャノグラフィー」に掲載された。
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