九州のニホンジカ、3分類の遺伝系統 福島大准教授ら研究

 

 福島大共生システム理工学類の兼子伸吾准教授(45)らの共同研究チームは8日、九州本島と大隅諸島(馬毛島、種子島、屋久島、口永良部島)に生息するニホンジカの遺伝子を調べた結果、三つの遺伝的なグループに区別できるとの研究内容を発表した。判断が難しいニホンジカの亜種の分類につながる成果としている。

 発表によると、三つのグループは〈1〉馬毛島と種子島に生息するマゲシカ〈2〉屋久島と口永良部島に生息するヤクシカ〈3〉そのほかの九州地方に生息するキュウシュウジカ。このうち亜種マゲシカは、分布域や系統的な独自性といった亜種としての実像がはっきりしていなかったが、亜種ヤクシカと共通の祖先を持ち、ヤクシカと同等の進化的時間をかけて成立した独自の系統だと分かった。

 研究チームは福島大や森林総合研究所(茨城県つくば市)などで構成。先行研究で報告されているミトコンドリアDNAのデータを再解析した。兼子氏は「ニホンジカのような身近な動物でも、分かっていないことがたくさんあることを示す好例」としている。