「線状降水帯」で危険度が急変、いわき市内、発生場所想定できず

 

 「行政の線状降水帯についての理解が追い付いていない。(雨が降る場所が)ランダムなので、どうやって想定したらいいのか、つかみ切れていない」。福島県の内堀知事は11日の定例記者会見で、線状降水帯が発生した状況での対応について課題を口にした。

 いわき市では、記録的豪雨になる前の早い段階(8日午後3時)で警戒レベル3の「高齢者等避難」、土砂災害の危険性が高まったとして午後7時にレベル4の「避難指示」をそれぞれ市内全域に発令した。

 ただ、午後7時40分ごろに市内で線状降水帯が発生すると、市内の河川が次々と氾濫危険水位に迫り、数分刻みでの対応が求められる状態に陥った。

 午後8時40分の蛭田川と宮川をはじめとし、40分間で計7河川の流域に避難情報で最も高い警戒レベル5の「緊急安全確保」を発令。市災害対策課には「もう対応が間に合わない。市全体を対象にすべきだ」との声が響き、午後9時40分、市内全域に緊急安全確保を出すに至った。

 被害に遭った住民からは「避難の判断が難しかった」との声が上がる。いわき市内郷綴町に住む門井順子さん(57)は8日午後8時ごろに屋外を確認、「まだ大丈夫だね」と家族と話をしていたが、雨は一気に強まり午後9時ごろには玄関まで水が迫っていた。慌てて電化製品などを2階に移したが、駐車していた車3台は水に漬かり、床上30センチまで浸水する被害を受けてしまった。

 住民はどのように対応するべきなのか。静岡大防災総合センターの牛山素行教授は「行政からの避難情報は避難を判断する上で参考とする情報の一つに過ぎない。ハザードマップで、どのような災害が起こり得るか把握しておくことが何より重要」と強調する。

 その上で、大雨の際に地図上で危険度の高まりを表示する気象庁の「キキクル」などを確認し、次に取るべき行動を判断する必要があるとした。