塀にバンパー乗ったまま...「通常の生活程遠い」 内郷豪雨ルポ

浜通りに大きな被害をもたらした記録的豪雨で、特に被害が大きかったいわき市内郷内町を14日、地元の自主防災組織の役員と共に歩いた。連日の復旧作業で疲弊する住民、浸水し動けないままの車。爪痕は色濃く残り、通常の生活に戻るまで長い時間を要すると感じた。(いわき支社・大内義貴)
氾濫した新川周辺に差しかかると、土砂を運ぶ重機や泥だらけの車をけん引するレッカー車が行き交う。砂ぼこりが頻繁に舞い、視界がかすんだ。この日は30度を超える暑さ。額に汗を流しながら砂をかき出す住民の顔には、疲労の色が見えた。
「通常の生活には程遠いよ」。同行した内町自主防災会長の馬目太一さん(77)は厳しい表情を浮かべる。視線の先の住宅の塀には、流された車のバンパーが乗っかったままになっていた。内郷内町では全住宅の半数の500戸ほどが浸水したとみられる。
最も水が押し寄せた南部の市道が複数交わるロータリー交差点。低地のため、雨水が集まる内水氾濫注意地点だ。今回の豪雨では、近くを流れる新川の300メートルほど上流で越水、すぐ南の栄橋に木やごみなどが集まって水がせき止められたことも重なり、水かさは2メートルほどまでに及んだ。
周囲を見渡すと、今も40台ほどの車が浸水で動けないままだ。越水地点では、水でなぎ倒されたガードレールがそのままとなっていた。
「『想定外』と言っては駄目だが、想定の外の外の外だった」。馬目さんは語る。3月に市や福島高専と協力して作ったばかりのハザードマップでは、住宅浸水はほとんど想定していなかった。基準とした4年前の東日本台風で大きな被害がなかったためだ。
防災会では、今回の被害を基にしたハザードマップを新たに作製する方針。防災訓練も教訓を生かした内容にするつもりだ。会の防災部長で防災士の資格を持つ菅野昭夫さん(76)は決意する。「常に情報を更新する必要がある。防災対策に終わりはない」
局所的大雨と橋ふさいだ漂流物
今回の記録的な豪雨では、被害がいわき市内郷地区に集中した。被災後に氾濫した新川や宮川などを現地調査した防災工学専門で福島大共生システム理工学類の川越清樹教授(52)は、線状降水帯による局所的な大雨や漂流物が橋の下をふさいだことなどが要因と分析する。
川越教授によると、内郷地区は中心部を新川、宮川の二つの河川が流れる浸水リスクが高い場所だった。いずれも中小河川で流域が急激に狭くなる場所が多く、曲がりくねっているため、増水した水が行き場をなくしやすい。
さらに、複数の橋を支える部分に木材などが絡まっていたことから、流されてきた木材や生活ごみなどが水をせき止めた可能性があるという。そこに局所的な大雨が降り、甚大な被害をもたらしたとみられている。川越教授はハード面の整備やハザードマップの情報の更新とともに「低いレベルのうちに逃げるなど、避難意識の向上も重要だ」と語る。
いわき市によると、新川や宮川は川底の掘削工事が未完了で、昨年度から急ピッチで進めていた周辺の排水路の整備や関連河川のかさ上げ工事も終わっていなかった。内田広之市長は「対策が間に合っていなかったことは事実。国や県に協力を求め早急に対策に乗り出したい」としている。
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