災害ごみ計画策定は4割、福島県内自治体 仮置き場周知に課題も

 
災害からの復旧に向けた第一歩となる災害ごみの処理。記録的豪雨で甚大な被害を受けたいわき市でも課題として浮上した

 地震や水害に伴う災害ごみの処理計画を策定している福島県内の市町村は、7月末現在で約4割にとどまることが15日、県や各自治体への取材で分かった。今回の記録的豪雨で甚大な被害を受けたいわき市などでは、災害ごみの処理が課題として浮上。災害ごみの処理は生活環境を早期に回復させるための第一歩で、異常気象が頻発する中、備えの重要性が増している。

 災害廃棄物処理計画は2016年1月改定の環境省基本方針により、都道府県と市町村に策定が求められた。災害ごみの発生量や仮置き場の候補地などを計画に盛り込んでおくことで、災害対応の円滑化と早期復旧を図るためだ。県は21年3月に策定した。

 台風シーズンを前に県が今夏実施した調査で、計画を「策定済み」と回答したのはいわき市や南相馬市など26市町村(44%)。環境省が実施した昨年3月末時点の調査では、全国の市町村の72%が策定済みだった。隣の山形県では全市町村が策定済みと答えている。

 26市町村のうち、水害時のごみ発生量を推計(算定方法の明示含む)していたのは13市町村とさらに半減する。仮置き場の候補地を「選定済み」としたのは38市町村(64%)だった。

 計画が未策定の伊達市は「(計画は)重要と認識しているが、ごみの発生量を含め、被害規模の想定は容易ではない」と説明。仮置き場の候補地が未定という相馬市は「本来の用途がある公有地を常に確保しておくのは難しく、準備したとしても容量以上のごみが発生する場合もある。民間などと事前に調整できていればいいが」と話した。

 今回の豪雨で被災したいわき市は東日本台風後の22年3月に処理計画を策定。今月8日夜からの豪雨後、土、日曜日を挟んで11日には仮置き場6カ所を開設した。計画には仮置き場の候補地や、ごみの推計発生量、連携体制などを明記し、素早い初動につなげたが、実際は仮置き場ではない100カ所以上の場所にごみが投棄される事態が生じた。

 災害ごみの処理に詳しい明星大の宮脇健太郎教授(廃棄物工学)は「いわき市は丁寧な計画を策定していたが、内容の周知も大切だ」と指摘。「水害で発生する災害ごみは置き場所が問題になりやすい。計画を策定しておくことは非常に重要で、未策定の自治体は速やかに検討を進め、内容を住民に周知することが求められる」と語った。

 県は25年度までの計画策定率100%を目指し、市町村担当者向けの研修会を年2回程度開催。専門家らを招き、早期の計画策定を求めている。