コーヒーかす...堆肥に 豆店主と常連客商品化、会津で循環の輪

 

 コーヒーを抽出した後に捨てられてしまう「コーヒーかす」を再利用して、家庭菜園用の堆肥にする取り組みが、会津で進められている。コーヒー豆店主と農家、就労支援事業所が手を取って商品化した。SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが広がる中、堆肥には「捨てるには惜しい」と感じていたコーヒーを愛する人たちの思いが詰まっている。

「コーヒーかすやいらない豆は余っていますか」。今回の取り組みは、会津若松市の自家焙煎(ばいせん)コーヒー豆店「LoverCoffee(ラバーズコーヒー)」の常連客間船栄崇(よしたか)さん(27)の一言がきっかけだった。間船さんは会津美里町の農家で、コーヒーかすを使った堆肥が作物に効果的なことを知っていたため、余りを分けてもらい、自分で堆肥にしようとした。

 声をかけられたオーナーの穂積昇平さん(37)は、不ぞろいの豆や焙煎期のかすを毎日大量に廃棄することを心苦しく思っていたことを打ち明け、2人で堆肥化の取り組みを始めた。まずは間船さんが自家消費用の堆肥を作り、その堆肥で育てた野菜をラバーズコーヒーで販売。より多くの人に広げようと、商品化することにした。

 しかし、商品化には仕込みができる十分な場所と労力が必要な上、コーヒーかすの量も不足していた。解決策が見つからない中、店の常連客の渡部淳さん(59)が「作業をやらせてほしい」と手を挙げた。

 渡部さんは障害者の就労支援などを行う会津社会事業協会の事務局長を務めていて、就労支援事業所の一室で作業を行うことになった。さらに穂積さんが交流サイト(SNS)などでコーヒーかすを募集。共感した多くの人が乾燥したかすを店に持ってきてくれた。

 商品化に向け、穂積さんが客から受け取ったコーヒーかすを渡部さんに預け、事業所利用者と共に2段階の発酵を行う。それを手で混ぜる作業を約2カ月間繰り返し、間船さんが最終発酵して乾燥させる。そうして出来上がった堆肥は土に混ぜることで土が軟らかくなり、味や食感が良い野菜ができるという。「捨てられるものに価値が生まれることが何よりうれしい」と渡部さんは話す。

 完成した商品「サステナブル堆肥 カフェたん」には地元の酒蔵やワイナリーも協力し、廃棄されるもみ殻やワインの搾りかすなども入っている。今春に販売を始め、県内のカフェ業界から堆肥の作り方を教えてほしいと言われるときもあるという。「土に返らないとごみになる。地球に返して人が恩恵を受ける循環の輪が広がってほしい」と願う間船さん。一杯のコーヒーが共感の輪を広げていく。(安達加琳)