「市民の足」に影響も 福島県内タクシー運転手、4年で484人減

高齢、コロナ禍で業界離れ
福島県内でタクシードライバーの減少が続いている。高齢化などに加え、新型コロナウイルス禍で業界を離れる人が増えたのも一因だ。タクシー事業所は稼働台数を縮小するなどして営業を続けているが、このままでは「市民の足」に影響が出る恐れもある。
「ドライバーは減っていく一方で、新しい人が入ってこない...」。県北地方のタクシー会社の担当者は危機感を募らせる。コロナ禍前に約60人いたドライバーは、収入減などで約40人にまで減少した。ドライバーの高齢化で時短勤務者も増えている。担当者は「需要が戻ってもドライバーがいなければタクシーを動かせない。どうすればいいのか」と頭を悩ませる。
タクシー業界を巡っては、コロナに伴う外出自粛や居酒屋の営業制限などで利用者が減少し、ドライバーの離職が相次いだ。県タクシー協会によると、県内のタクシードライバーは3月末時点で3091人。昨年3月末より46人減少し、コロナ禍前の2019年3月末より484人減少した。同会の菊田善昭専務理事(71)は「以前から『稼げないから』と敬遠されていたが、コロナ禍で収入が減り、辞めていく人が多くなった」と話す。
現在はコロナに伴うさまざまな制限が解除され、日常が戻ってきたが、タクシー利用については都心部と地方で状況が異なる。全国ハイヤー・タクシー連合会のまとめによると、都心部のタクシー需要がコロナ禍前と同水準に戻っているのに対し、本県の需要は7割程度。菊田専務理事は「地方の利用は地元住民が多い。地方の住民はコロナ禍で外出しない習慣が身に付いてしまったのではないか」と分析する。
県内のタクシー稼働状況については「今は需要が戻っておらず、台数は足りている」という。ただ「慢性的なドライバー不足に変わりはない。(需要が回復した時に備え)働き手を集める策を早急に考えないといけない」との認識を示している。(三沢誠)
意欲向上につながる環境を
地域公共交通に詳しい名古屋大大学院の加藤博和教授(53)によると、地方のタクシー需要は通院などで朝方に集中しているという。そのため「需要の少なくなる午後1時~同5時ごろの料金を安くするなど、一日を通して利用してもらう環境をつくることが大切だ」と求める。
タクシーは地域によって需要の大きさや変動パターンが異なる。加藤教授は「需要に応じて料金を変更することで需要変動が抑えられ、収支の改善も図れる」と指摘。公共交通の維持のため「タクシードライバーを『より稼げる職業』にし、ドライバーの意欲向上につなげていかないといけない」と訴える。