放射線量未測定のまま...解体の鉄くず無断売却か 大熊の復興拠点

東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域のうち、除染とインフラ整備を先行した特定復興再生拠点区域(復興拠点)で、建物解体工事の現場から出た汚染の恐れがある鉄くずなどを作業員が無断で持ち出し、県内の業者に売却した疑いがあることが19日、環境省福島地方環境事務所などへの取材で分かった。持ち出された鉄くずなどは放射線量が未測定だったとみられており、放射性廃棄物の処分などを定めた放射性物質汚染対処特別措置法に抵触する可能性がある。
工事を発注した環境省によると、現場は大熊町の復興拠点内にある大熊町図書館・民俗伝承館。昨年6月に避難指示が解除された後も一部工事が続いている。
環境事務所や関係者によると、町内の建物解体や除染などの工事を鹿島・東急特定建設工事共同企業体(JV)が約51億円で受注し、今年2月ごろ同館の解体に着手した。持ち出しは4~6月ごろ、1次下請けの土木工事業「青田興業」(大熊町)に関係する作業員によって行われた。同省は7月下旬、JVからの報告で把握したという。
解体工事の受注業者は今夏から別のJVに替わり、青田興業も下請けから外れている。
帰還困難区域の解体工事で生じる金属類など廃棄物処理までの流れは【図】の通り。全量を指定の仮置き場に集めた後、放射線量を測定。1キロ当たり10万ベクレルを超えれば中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)、同10万ベクレル以下は専用の処分場(中間処理再資源化施設)に搬入される。同100ベクレルを下回れば再利用できるが、仮置き場での線量確認が前提となる。環境事務所によると、過去の実績ではほとんどが10万ベクレル以下で、今回の現場からも10万ベクレルを超える金属くずは出ていないという。
鹿島の担当者は福島民友新聞社の取材に「7月末に協力会社からの報告で把握し、環境省に報告した」と認めた。既に双葉署に相談したという。県警は持ち出しの量や取引実態などについて情報収集を進めている。
「持ち出した作業員分からぬ」
青田興業の社長は19日、福島民友新聞社の電話取材に応じた。
―今回の事態を環境省にいつ報告したのか。
「8月ごろに周囲からうわさを聞き、環境省と元請け業者に文書ですぐに報告した」
―うわさを聞いた時は。
「びっくり。それはないだろう、と。(調査結果が出た後)責任を取らないといけない」
―関与した作業員は。
「社員なのか、下請けなのか分からない。横流しがあったのかどうかも分からない。やっていないと信じたい」
―鉄くずの放射線量や売却先の業者について、どのように認識しているのか。
「何も分からない。環境省で調査中だ」
―大熊町への思いは。
「いわき(市にあるの)は経理中心の営業所。本社は大熊だ。(原発事故で)避難し、ほうき一本から頑張ってきた。苦労してきたのに、こんなことになって」
◇
放射性物質汚染対処特別措置法 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の除染や放射性廃棄物処理の枠組みを定めており、2012年1月に全面施行された。基本方針に年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以下を目指すと掲げた。ごみの焼却灰や下水汚泥、稲わらなどの指定廃棄物については、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル超の基準を下回った場合に指定を解除し、一般ごみと同様の処分を認めている。
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