津島小ピアノ、復活の音色 音楽室に12年...生まれ変わった

東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県浪江町の旧津島小の音楽室で12年間にわたり眠っていたピアノが21日、修復を経て、初めて聴衆の前で披露された。旧津島中で開かれているイベント「標葉(しねは)祭り」の特設ステージで、ピアニストの西村由紀江さんによる演奏が行われ、津島の秋空に復活の音色が響いた。「あの頃の記憶がよみがえってくる」。津島小の卒業生からは喜びの声が上がった。
被災地のピアノを再生して地域の元気を取り戻すプロジェクトの一環。津島小を含む津島地区の一部が3月、特定復興再生拠点区域(復興拠点)として避難指示が解除され、人が立ち入れるようになったことをきっかけに、全国各地の被災ピアノを修復してきたいわき市のピアノ調律師遠藤洋さんと、被災地支援を続けている西村さんが企画。福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)の支援でピアノを復活させた。
ピアノは今夏に津島小から運び出され、遠藤さんが修復と調律を行ってきた。なみえ創成小の子どもたちが「なみえまちのミライ」をテーマに、色とりどりの塗料でピアノに花や動物などを描き、色鮮やかな外観に生まれ変わらせた。
西村さんによる演奏では、原発事故後に閉校した津島小・中の校歌のほか、復興支援ソング「花は咲く」などが披露され、津島小卒業生や集まった聴衆らが一緒に歌い上げた。浪江町の子どもたちによるピアノ演奏も行われた。イベントの主催者で津島小卒業生の及川里美さん(32)は「夏休みの合唱部の練習で、あのピアノを囲んで練習に励んだ記憶がよみがえってきた」と喜んだ。
「津島小に眠っていたときは孤独に耐えているような寂しい音だったが、今は社交的で華やかな音に変わった。浪江の風や観客の手拍子を受けて、ピアノは生命力を取り戻したようだ」と西村さん。遠藤さんは「明るい音色だ。このピアノは浪江の人々と共に、未来へと進んでいく存在になる」と笑顔を見せた。
ピアノは今後、つしま活性化センターに常設される。(渡辺晃平)
きょうまで標葉祭り
標葉祭りは22日まで、旧津島中で開かれている。浪江青年会議所の主催。22日は南津島郷土芸術保存会による田植踊の披露など、多彩な催しを企画している。時間は午前10時~午後3時。
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