飯舘産牛...おいしさ伝えたい 畜産農家が完全予約制精肉店開店

 
店舗の前で「食べた人の記憶に残るおいしい肉を販売したい」と話す山田さん

 飯舘村で畜産農家を営む山田豊さん(41)は、同村の自宅敷地内に精肉店「肉のゆーとぴあ」をオープンした。山田さんは「肉の販売を通じて、飯舘産牛はもちろん、福島県産牛のおいしさや魅力を発信していきたい」と意気込みを語る。東京電力福島第1原発事故後、村内で精肉店が営業するのは初めて。

 山田さんは原発事故による全村避難後、「畜産に関わる仕事を続けたい」との思いから、避難先だった京都市にある精肉店「中勢以(なかせい)」に就職した。これが自身の精肉店をオープンさせるきっかけとなった。肉の目利きや肉を切る技術、お客さん目線の肉の売り方など精肉店のイロハを約5年間学んだ。

 「この5年の間に1頭だけ、食べた経験が忘れられないほどの素晴らしい肉に出合った。自分も飯舘でこんな肉を提供できるように畜産農家として頑張りたい」。そうした思いが募り、2022年4月に帰村し、今年7月に精肉店をオープンさせた。

 山田さんは現在、約150頭の牛を飼育している。昨年は原発事故後、初めて村内で村産牛肉の対面販売が行われるなど、畜産業の再生に向けた機運が高まっている。ただ、課題もある。山田さんによると、東日本大震災後は東京での競りで、県産の枝肉は1キロ当たり200~500円安く取引され、価格の回復が解決すべき問題という。「『肉の味が忘れられない』と思ってもらえるような肉を販売したい。県産牛の質の高さを認知してもらうことで、価格の底上げにつなげていきたい」と力を込める。

 精肉店は完全予約制で、注文に応じて焼き肉用やステーキ用などに肉を切り分けて販売する。住所は飯舘村松塚松塚65。問い合わせは肉のゆーとぴあ代表の山田さん(電話090・2993・6062)へ。