高規格救急車問題、揺れる国見 経緯検証へ百条委設置、31日提案
国見町が民間企業と共同開発した高規格救急車を所有して貸し出す事業を断念した問題を巡り、町政が混迷を深めている。一連の経緯を検証する第三者委員会は発足からわずか3カ月で委員3人中2人が突然辞任するという異例の事態だ。事態を重く見た町議会も独自に調査に乗り出す方針で、混乱を本年度中に収束できるかどうかが焦点となる。
第三者委員2人が辞任
「あくまで第三者の視点から事実関係を確認していく」。第三者委の委員長を務める鈴木靖裕弁護士は、福島民友新聞社の取材に今後の展望を語った。6月に発足した第三者委は2回会合を開いたが、9月に「一身上の都合」を理由として委員2人が突如辞任した。
関係者によると、辞任した委員の一人は調査の進め方を巡り、町側と意見の相違があったとみられ「町に関連資料の提出を求めた際などに不誠実な対応があったため、調査の継続は困難との判断に至った」と主張している。辞任した委員2人は辞任前に委員会内や町に相談などはなく、突然の出来事に町側も驚きを隠せなかったという。町が後任の委員の選定を急いでいるものの、再開のめどは立っていないのが現状だ。
この事態と町監査委員から「町執行部の責任は重い」との意見が出たことなどを受け、町議会は地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)の設置を31日にも開く臨時会に提案する方針だ。議会関係者によると、百条委は議長を除く議員10人で構成される見通しで、事務手続きの経過といった事実関係を確かめるという。議会内からは「第三者委の動向を注視しつつ、議会でも追及してきたが、百条委で事業の問題点や再発防止策などを洗い出す必要があると判断した」との声が出ており、本年度内にも調査結果をまとめたい考えだ。
一連の問題を巡っては、事業の実施に至る経緯に町執行部が疑念を晴らせないことで混迷の度合いを深めてきた経緯がある。町幹部は「規則に沿って調査に協力していく」としている。
行政や議会軽視、社長の発言で一変
問題の事業を巡る経過は【下表】の通り。町は昨年度、民間企業と共同で高規格救急車の開発に着手した。本年度から、町が車両12台の所有権を持ちながら、リース会社などを通じて全国の消防組合や市町村へ貸し出す計画だった。約4億3200万円の事業費は、全て企業版ふるさと納税による寄付を原資にした。
しかし、今年3月に状況は一変した。町と事業契約や包括連携協定を結んでいた備蓄食品開発のワンテーブル(宮城県多賀城市)の当時の社長が、行政や議会を軽視する発言をしたことを認めた。町は信頼関係が失われたとして同社との契約や協定を解消。事業も断念し、取得した高規格救急車12台は県内外の自治体や消防に寄贈する手続きを進めている。車両は宇都宮市の自動車工場で保管されており、9月には3台を県内外3団体に無償で譲渡した。
同社と町の関係は民間企業など14事業者と町が2022年3月に設立した共同事業体「国見町官民共創コンソーシアム」で、同社は事務局を務め、運営を委託されていた。
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