復興相、当初把握せず 作業員に薬液、専門家「省庁の連携不足」

 

 東京電力福島第1原発で作業員が放射性物質を含んだ薬液を浴びた問題を巡り土屋品子復興相は30日の衆院予算委員会で、事案の発生について「報道で知った」と述べ、当初に事案発生を把握できていなかったことを明らかにした。作業員が内部被ばくする恐れもあった事案が、復興の司令塔役を担う復興相に共有されていなかったことについて、専門家からは省庁の連携不足を指摘する声が上がる。

 作業員が薬液を浴びた事故は25日午前に発生。原発の増設多核種除去設備(ALPS)の洗浄作業中だった協力企業の作業員5人が、放射性物質を含む薬液を浴びうち2人が病院に搬送された。現在は退院している。作業時には、身体汚染を防ぐための雨がっぱを身に着けていなかったことも判明している。

 東電は、事案が発生した25日に内閣府などに発生を報告した。一方で土屋氏は、報道で知るまで事案を把握できておらず「復興庁の中でしっかりと情報をいろいろな省庁と連携しながら(把握して)いくべきだった」と反省の弁を述べた。岸田文雄首相は秘書官から報告を受けていたとし「関係省庁の連携、意思疎通は重要。今一度点検していく」と強調した。

 原発廃炉や復興に詳しい東京大大学院の開沼博准教授は「復興庁が(事案の)直接の担当ではないとはいえ、地元の目線から見れば省庁間の連携不足や縦割りを感じる」と話す。開沼氏は、今後は除染土壌再利用などの議論も本格化してくるとした上で「福島には縦割りでは解決できない課題は多い。(復興庁の設置期限である)2030年度以降の道筋を踏まえても改善の必要がある」と指摘した。

 飛散100ミリリットル→数リットル 東電が訂正

 東京電力は30日、作業員が放射性物質を含んだ薬液を浴びた問題が発生した際に公表していた情報を訂正した。飛散した薬液の量は約100ミリリットルから数リットルと大幅に増加、薬液を浴びた協力企業作業員の5人は1次下請けではなく3次下請けだった。正確性に欠けた情報公開となり、東電の情報発信の信頼性が問われそうだ。県は東電に対して、改めて正確で適切な情報公開を求めていく考え。

 30日に元請けへの聞き取りで情報の誤りが判明したという。飛散した薬液の量について、東電の担当者は「推測値」と前置きした上で「除染や(薬液の)蒸発により正確な値は算出できない」と説明した。誤った情報を公表した原因について東電は「調査をしている」とするにとどめた。

 県は31日、県廃炉安全監視協議会の労働者安全衛生対策部会を開く。今回の問題についても議題に挙がる見通しで、県原子力安全対策課の担当者は「情報の正確性、信頼性が疑われる事態。東電には調査を求めたい」とした。