東日本大震災の知識「風化進む」 福島大の1年生対象に調査

 

 福島大の1年生を対象に東日本大震災後の本県に関する知識を問う調査を実施した結果、2019、21、22年度の3年間で平均得点が低下した。調査を担当した同大教育推進機構の前川直哉准教授(46)は「時間の経過とともに本県に関する学生の知識が薄れ、風化は確実に進行している」と指摘、学校や社会全体で知識を伝えていくことが必要としている。

 出身地で認識に違い

 前川氏らの研究チームが調査し、1日の同大定例記者会見で発表した。調査は、同大の授業「ふくしま未来学入門1」の初回に出席した入学したばかりの1年生を対象に、五つの選択肢から一つを選ぶ20問を出題した。同一設問を3年間実施し、計968人の回答を分析した結果、平均得点(20点満点)は19年度が9・5点、21年度が8・6点、22年度が8・1点となり、時間の経過とともに知識の低下が見られた。

 正答率を見ると、「福島第1原発でつくられた電気の供給先」や「ピーク時の県内外への避難者数」など10問で低下した一方、「シーベルトの定義」や「セシウム134の半減期」など4問で上昇した。前川氏は正答率の変化の詳しい要因は不明とし、正答率が上昇したのは高校までの放射線教育の効果もあるとみている。

 学生の出身地別の平均得点は、本県出身者が9・4点、本県以外の東北地方が7・8点、東北地方以外の国内が8・1点、国外が8・7点で、本県出身者の得点が高かった。本県出身の有無で正答率の差が大きい設問もあり、「令和元年度産米は約950万袋だが、出荷制限となる基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射線量が検出されたのはどのくらいか」との設問で「0袋」の正解を選んだのは本県出身者が43・3%、本県以外の東北地方が30・5%、東北地方以外の国内が28・0%で、認識に違いが見られた。

 今後、他県の大学でも同種の調査を検討しており、前川氏は「福島で暮らす人だけではなく、県外や海外に福島の経験を伝え、人類の未来をつくり上げていくことが重要」としている。