補助スーツ、軽く安く 南相馬に拠点のイノフィス(東京)開発

 
新型のアシストスーツを装着し、約20キロの水が入ったコンテナを持つ社員。荷物の持ち上げや中腰の維持といった作業で負担が軽減される

 作業用アシストスーツの大手で福島県南相馬市に製造拠点を置くイノフィス(東京)は、以前より用途を大きく広げる新型スーツを開発した。硬いフレームをなくすことで動きやすさと低価格を実現し、介護や農業、製造業などさまざまな分野での活用を想定する。アシストスーツの市場が国内外で拡大する中、同社は海外展開も積極的に進めており、「本県発」の着用型ロボットを浸透させ、労働環境の改善に役立てる考えだ。

 新型機は「マッスルスーツ・ソフトパワー」。南相馬市の拠点でも製造している。空気圧を使った従来機より補助力はやや下がるが、フレームがないため体を動かしやすく、移動や車の運転がある作業に向く。何も装着しない場合と比べ、腰の負担は約35%軽減。重さ430グラムと軽く、体との接触面積が減るため夏でも長時間作業できるという。

 特徴はモーターなどの電力を使わず、引っ張る力が異なる2種類のゴムを組み合わせて体の動きを補助する構造だ。医療用サポーターメーカーと共同開発し、自然な着心地も追求した。10年前に会社を設立した当時の機種は60万円台と高額だったが、新型機は6万円を切る。

 同社は東京理科大発のベンチャーとして設立し、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を推進する県の支援を得て性能の向上を進めた。これまでにシリーズ累計2万5千台を販売し、フレーム型アシストスーツのシェアは国内で62.9%に達する。昨年、アジアや欧米など海外でも販売を始めた。

 少子高齢化と労働力不足を背景に、アシストスーツの市場規模は拡大が予想されている。市場調査会社の富士経済は、2022年に46億円だった国内市場が25年には70億円に達すると試算。海外の調査会社は全世界の市場を28年に54億ドルと予測しており、これは22年の約14倍に相当する。

 新型機は、仙台市の保育園で実証試験が進むなど、新しい分野で活用を模索する動きもあるという。乙川直隆社長は「アシストスーツの可能性は無限に広がっている。私たちが持つ人工筋肉のノウハウを生かし、腰だけでなく全身を補助する製品を生み出したい」と語る。目指すのは「腰痛に悩む人がいない社会」だ。