文化財大好き...市民が案内役、南相馬、謝礼付きサポーター好評

 
国指定重要文化財「旧武山家住宅」で、立ちながら建物の特徴などを紹介する文化遺産サポーターの2人=南相馬市原町区

 福島県内最多となる国指定史跡の登録数を誇る南相馬市は本年度、市内に数多くある文化財を市民らが謝礼付きでPRする「文化遺産サポーター制度」を始めた。市によると、有償のサポーター制度は県内では珍しく、文化財ファンであるサポーターからは「やりがいがあり、自分も勉強になる」と評判は上々だ。市は市民ならではの視点を生かし、文化財の魅力発信を強化したい考えだ。

 市内には奈良―平安時代の郡役所跡の泉官衙(かんが)遺跡や、県内初の史跡公園である桜井古墳など8件の国指定史跡があるほか、県や市指定を含め計160件の文化財が所在する。相双地方を代表する伝統行事「相馬野馬追」は全国的に知名度が高い一方、ほかの文化財については十分に知られていないのが現状だ。このため市は、市民目線を取り入れることで効果的な発信を図ろうと同制度を導入した。

 時間に応じ一日最大6000円

 市によると、サポーターは14日現在で56人が登録しており、中には東京都や神奈川県の登録メンバーもいるという。

 見学会などで来場者に文化財の特徴を説明したり、遺跡上に立ち建物跡の規模感を伝えたりする。また土器作りなどもサポートする。来場した障害者の介助など活動内容は幅広く、歴史に詳しくなくても活動できるのが特徴だ。時間に応じて一日最大6千円の謝礼が出るほか、市博物館が入館無料になる特典もある。

 サポーターに登録した文化財ファンからは制度を歓迎する声が上がる。遺跡や博物館が好きという同市の田代穂(みのり)さん(36)は、サポーターを集めた事前の研修会で質問できたり、土器などに触れられたりするのが魅力といい「分からないことを知ることができるし、ロマンを肌で感じられる貴重な機会」と制度を喜ぶ。同市の会社員須田理紗子さん(30)は「来場者との会話の中で新たな驚きもある。知識が豊富なサポーターとも話せて勉強になる」と話した。

 市文化財課の川田強課長補佐は「有償にすることでサポーターとしてのやりがいを感じてもらえれば」と期待する。市内では泉官衙遺跡と浦尻貝塚で史跡公園の整備が進んでおり、市はサポーターのニーズがさらに高まると想定。交流サイト(SNS)を使った情報発信やサポーター同士の集会なども検討しており、「サポーター制度を通じて交流人口の拡大にもつなげたい」と語った。


 市外からも登録OK

 サポーターは年2回以上の活動が必要で、事前アンケートで希望する活動を申告できる。登録は随時受け付けており、年度ごとの更新制で来年度以降も募集する予定。市外居住者でも応募可能。申し込み、問い合わせは市文化財課(電話0244・24・5284)へ。