新常交バス区間1割減へ 24年4月、いわき中山間部中心に廃止

 

 いわき市で路線バスを展開する新常磐交通は18日、来年4月に距離にしておよそ1割の路線を廃止することを計画していると発表した。赤字路線の解消と慢性的な運転手不足に対応するためで、同社によると過去に例のない規模での路線廃止となる。

 赤字、運転手不足

 同社によると、平日は【図】のように再編する方針。現在の133系統のうち中山間部を通る系統を中心に73系統を廃止し、9系統を新設。便数は現状の693本から623本に減便する。この再編により、全体の519・3キロのうちのおよそ1割に当たる計49・58キロの路線(区間)が廃止となる。

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 土日祝日は現在の51系統から、JRいわき駅やいわきニュータウン、内郷、湯本、小名浜、泉などの主要地域をつなぐ13系統に限定し、342本から225本に減便する。

 現在の平日1日当たりの総利用者は1万人。今回の路線廃止により、このうち約3千人に路線の変更や交通手段の変更を余儀なくされるなどの影響が出ると見込んでいる。

 同社では路線バス全体のおよそ3分の2が赤字路線で、黒字路線や高速バスなどほかの事業で赤字分を補ってきたが、新型コロナウイルス感染拡大による利用者減少で赤字がより深刻化。燃料費高騰や従来の運転手不足も影響し、今回の決断に至った。

 昨年度の赤字路線の赤字額は約2・5億円に上り、ドライバーは約30人不足しているという。18日に記者会見した同社の門馬誠常務は「路線を第一に守ってきて、それがプライドでもあった。でも限界が来た。(ほかの路線を)しっかりと残すための決断でもある」と理解を求めた。

 住民不安「送り迎えするしか」 市が代替手段検討

 新常磐交通の路線廃止方針を受け、市民からは影響を危惧する声が上がる。いわき湯本高には路線廃止が計画されている地区から通学する生徒がおり、野球部監督を務める小野裕久教諭は「部活動は保護者が送り迎えするほかなくなるかもしれない」と話した。

 いわき市の担当者は「今後の対応や交通計画を考えていきたい」と話した。タクシーなどを使った予約型乗り合い交通(デマンド交通)や、自治体やNPO法人による有償旅客運送などの代替交通手段を既に検討しているという。

 県内5年間で340人不足か

 バス運転手不足の問題は、県内のバス事業者共通の課題だ。日本バス協会の調査で、県内40の事業者が本年度から5年間に計340人程度の運転手が不足すると回答している。

 会津若松市の会津乗合自動車では、運転手不足の影響による減便が続いている。解消に向け、社員の賃上げや大型2種免許の取得費用を会社が負担するなどの対策を講じている。求人はインターネットなどを通じて常に出しているが、応募がないのが現状だという。

 同社の津田弘幸バス事業本部長(62)は「運転手の確保に向け努力はしているものの、はっきりとした解決策は見つかっていない」と吐露した。