福島県、自然公園誘客拡大 復興へ新拠点活用、首都圏事業も視野

 

 本県の自然公園で復興への試みが続いている。2010年に1500万人台を誇った年間利用者数は、東京電力福島第1原発事故を境に激減。県と環境省は19年に国立公園などの利用を促す「ふくしまグリーン復興構想」を策定、魅力発信に注力したが、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり「回復が見込めない状況」(県)だ。県は24年度、新たな観光拠点を活用した情報発信を進めるほか、首都圏での誘客事業を模索しており、裾野の拡大につなげたい考えだ。

 10月31日公表の県環境白書によると、本県には国立公園3カ所、国定公園1カ所、県立自然公園11カ所があり、12年以降は原発事故後の急減から持ち直して1000万人前後で推移したが、20年には新型コロナの影響で再び落ち込んだ。22年の利用者は計855万人で目標(1056万人)の8割。23年以降は1064万人を目指している。

 新型コロナ禍で、アウトドア活動は3密(密閉、密集、密接)を避けやすいとして注目を集めた。観光庁によると、20年に394万人だったキャンプ場宿泊者数は22年、コロナ禍前より多い635万人に増加。自然公園とは明暗が分かれた。

 県はグリーン復興構想に基づき、24年度は越後三山只見国定公園の誘客に力を入れる方針。同公園は会津8市町村にまたがり、只見川流域や広大なブナ林、希少な猛禽(もうきん)類の生息域などを含む。21年には只見柳津県立自然公園が編入された。

 柳津町の道の駅に来夏開所する奥会津ビジターセンターには、JR只見線の走行風景を体感できる運転席ブースやジオラマなどを設ける。近年整備を進めてきた「会津トレイル」の7町村全15コースや、50カ所の「絶景巡礼ビューポイント」といった素材も活用しながら、本県の多彩な自然を積極的に発信する。

 24年度はまた、同構想着手後初めて東京で誘客事業を展開することも視野にれる。首都圏は交通アクセスの良さからかねて多くの登山客が来県しており、自然公園の魅力を売り込む考えだ。県は「本県には全国に誇れる自然公園がある。新型コロナによる行動制限が緩和され、新たな試みも展開したい」(自然保護課)と意気込む。