「仮想空間」から福島発信 郡山・陰山建設など4社、24年春開始

 
「メタ旅 ふくしま」の仮想空間のイメージ。大内宿をイメージしたショッピングモール(左)や、三春滝桜を模したオブジェなどが配置されている

 郡山市の陰山建設など4社はインターネット上の仮想空間「メタバース」に進出し、来年春から新たなサービスの提供を始める。「メタ旅 ふくしま」の名前で買い物や企業の情報発信のほか、博覧会(EXPO)などを開催できる仮想空間を整える。同社によるとこうした取り組みは県内初で、時間や場所を問わない新たな方法で福島の魅力を国内外に発信する。

 大内宿(下郷町)をイメージしたショッピングモールや赤べこなどがデザインされた物産館―。利用者は自身の分身となる「アバター」を使って本県をかたどった仮想空間に自由に出入りし、買い物を楽しんだり企業の情報に触れたりすることができる。

 県外企業と県内企業がそれぞれ出店するショッピングモール2カ所と物産館、県内の地域別のイベント情報などを発信する「ふくしまサービス館」、全国の企業が集う「EXPO」の計5施設を配置する。出店企業などは各ブースを自社の電子商取引(EC)サイトとリンクさせたり、PR動画を流したりできる。18日に専用のホームページが開設され、サービス開始に向けた出店企業や自治体などの募集が始まった。

 メタバースへの参入は、建設会社ならではの視点がきっかけだ。陰山建設社長の陰山正弘さん(47)は「土地の価格や建設コストが上がり、現実世界で何かを始めようとしても二の足を踏んでしまう。仮想空間であれば少ないコストで出店できるし、新しいことに挑戦する人を後押しする環境を整えたかった」と語る。

 内装業などを手がける郡山建装(郡山市)の専務平栗駿さん(30)、中古車販売店「アップル」などを店舗経営するYNCコーポレーション(同)の社長伊藤裕也さん(45)らと一緒にサービスを展開する。連携により、建設会社らしいデザイン性の高さや、マーケティングの強みを生かしていく。

 サービスは経産省の補助を受けて提供し、建設業のデジタル変革(DX)に関するアプリを開発、提供する陰山建設のグループ会社「ビルディングサポート」が運営を担う。

 サービス開始に向けて、陰山さんは「福島の良さを仮想空間で発信し、リアルの福島をより良くしていきたい。さまざまな人、企業に参加してもらって可能性を広げたい」と話す。

 ホームページのアドレスはhttps://lp.meta‐tabi.jp/fukushima(大内雄)

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 メタバース 3Dコンピューターグラフィックスや仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などの技術を応用して構築される仮想空間。別の場所にいる人同士が、自らの分身となるキャラクター「アバター」を使い、実際に同じ場所にいるような感覚で交流することができる。ゲームや音楽イベント、ショッピングなど幅広い分野で活用が始まっている。