氷柱観光...悩む駐車問題 栗子峠・万世大路、地元はツアー推奨

 
「万世大路」のトンネル跡に出現した巨大な氷柱=2022年1月、福島市飯坂町・二ツ小屋隧道

 福島市と山形県米沢市を結ぶ栗子峠の旧道「万世大路」に残るトンネル跡「二ツ小屋隧道(ずいどう)」で、厳寒期に現れる巨大な氷柱を目当てに県内外から観光客が訪れている。ただ、付近の国道13号のチェーン脱着所に観光客の駐車が相次ぎ、本来の役割を果たせない状況が表面化。地元関係者はツアーやタクシーの利用を推奨するほか、本年度から登山届(計画書)の提出を呼びかけるなど解決策を模索する。

 「遺構を観光資源として活用することで経済効果が見込めるが、オーバーツーリズム(観光公害)に陥ってはならない」。福島市フルーツラインエリア観光推進協議会事務局長の中山高行さん(40)は、複雑な心境を吐露する。

 オーバーツーリズムは多くの観光客が集中して住民生活に影響が出る現象で、国内外の観光地で問題化している。万世大路は近年、二ツ小屋隧道が「氷の神殿」として全国的に脚光を浴びる一方、2020年ごろから駐車の問題が出始めた。

 対策が難しい要因として廃道に伴い、特定の管理者が存在しないことが挙げられる。協議会を中心に地元の各種団体が協力して自主的に管理しているためだ。

 中山さんによると、協力団体の一つ、NPO法人いいざかサポーターズクラブが福島交通飯坂温泉駅を発着点に企画した有料の個人ツアーは昨年1~3月に77人が参加。今年同期に最寄りの道の駅ふくしまを発着点にした有料のバスツアーを含めると163人が参加し、注目度は増している。

 一方、自家用車で訪れた観光客が、付近の国道13号沿いに2カ所あるチェーン着脱所を駐車場として使う場面が多くなったという。同NPO理事の佐藤耕平さん(48)は「昨年は多い時で数十台の車が止まっていた」と明かす。

 チェーン着脱所は冬期間(12月~翌年3月)、除雪車の転回場や、遭難者を救出する緊急車両の駐車場の役割も持つ。管轄する福島河川国道事務所は「スタックした車の避難所としても機能するため、本来の目的以外での長時間の駐車は控えてほしい」と訴える。

 このため協議会は12月下旬から、道の駅ふくしまに登山届の用紙と回収箱を設置し、観光客に提出を呼びかける方針だ。登山届には名前や電話番号、車のナンバーなどを記入するため、車の所有者の特定につながり、早急な対応に生かす狙いがある。併せて、登山届アプリ「コンパス」につながるQRコードを観光客に配るチラシに載せる予定。

 需要があれば、道の駅ふくしまからのシャトルバス運行も検討する考えだ。中山さんは「地域のキャパシティー(収容能力)を考えた観光の展開が重要だ。民間でできる対策を講じていく」と話した。(桜井駿太)

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 二ツ小屋隧道 1881(明治14)年に開通した福島市と山形県米沢市を結ぶ旧道。国道13号の整備に伴い、昭和40年代に廃道となった。1996年に文化庁の「歴史の道百選」に選ばれた。厳寒期にはトンネル内の崩落個所から流れ出る地下水が凍り、巨大な氷柱が見られる。

駐車禁止のチェーン脱着所