日本初の月面着陸、「福島の力」が後押し

 
「月面着陸の観測を達成できてうれしい」と話す大竹教授

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小型探査機「SLIM(スリム)」のプロジェクトには本県の研究者が関わり、探査機には本県で開発された電池が搭載されている。「福島の力」が日本初の月面着陸という偉業に貢献した。

 観測カメラの運用担う

 スリムのプロジェクトメンバーを務める会津大コンピュータ理工学部の大竹真紀子教授(56)は「月面着陸して観測することを目標に取り組んできた。今回ようやく達成することができてうれしく思う」と喜びを語った。

 大竹教授は、プロジェクト発足時の2016年ごろから関わっている。スリムに搭載されている観測機器「マルチバンド分光カメラ」(MBC)の運用や調整、着陸地点の検討などを担っている。今後は、スリム着陸地点付近の岩石や土壌をMBCで観測する。

 月表面の土壌には、月深部から放出されたマントル物質があると考えられている。月の起源を巡っては、地球に別の天体が衝突して生まれたという「巨大衝突説」が有力視されており、土壌分析を進めることで月の起源の解明が進む可能性がある。

 07年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」に搭載したカメラにも関わっていた大竹教授は「スリムのプロジェクトで実証された技術は、今後の月探査に大きく貢献してくれる」と期待を寄せる。「今回の技術を次の探査に役立てられるよう、今後も関わっていきたい」と意欲を語った。

 開発電池が切り札に

リチウムイオン電池古河電池いわき事業所で開発され、スリムに搭載されたリチウムイオン電池(同社提供)

 スリムに搭載された宇宙用リチウムイオン電池のプロジェクトに関わった古河電池研究開発本部の近藤宏篤さん(32)は「無事に着陸し、うれしい。ほっとしている」と語った。

 2014年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」や、18年に打ち上げられた水星磁気圏探査機「みお」などに続いて、同社の電池が搭載された。今回は形状に工夫が加えられ、従来の「缶タイプ」から「ラミネートタイプ」と呼ばれる平たい形状に変更。これにより大幅な小型軽量化に成功したという。

 打ち上げ時や着陸時のほか、宇宙で日陰となる時間帯に電力を供給するための電池。月面着陸時にバッテリーを使いきる設計だったが、着陸後もバッテリーが残った。

 スリムは現在、太陽光発電ができない状況にあるが代わりにこの電池が使える可能性があるという。近藤さんは「月面の高温に耐えられる間は電池が使えるかもしれない。残ったバッテリーを使い切って、最後の役割を果たしてくれることを信じている」と願った。