【環境考察/森の再生】県内で進む「虫の脅威」...樹木むしばむ

 
ナラ枯れの被害に遭ったアカガシ。樹木には虫が入り込んだとみられる穴が確認できる=浪江町・大聖寺

 「木の幹が腐って白くなり、枝が突然折れてしまった。風が強い日の翌日は太い枝が何本も折れていますよ」。大聖寺(浪江町)の住職青田敦郎(63)は、境内にある県指定天然記念物「アカガシの樹群」を見ながらつぶやいた。その言葉通り、アカガシは幹の一部が白くなり、枝が何本も折れていた。

 ■西日本から東へ

 樹齢数百年とされる大聖寺のアカガシは、町などが2019年に行った調査で大半が枯れ、2本が枯死していることが判明した。「ナラ枯れ」の被害に遭っていた。ナラ枯れは昆虫のカシノナガキクイムシが媒介する樹木の伝染病で、かつて被害は西日本が中心だったが、近年は東日本にも広がっている。原因ははっきりしないものの、病原体となる昆虫が暖かい地域で繁殖していることから、地球温暖化の影響を指摘する声もある。町などが対策に乗り出しており、町教委は「貴重な文化財を何とかして守りたい」(生涯学習課)とする。

 ナラ枯れの被害は県内で急速に拡大している。県によると、00年に西会津町で初めて確認された。03年に760立方メートルだった被害は翌04年に5倍強の4037立方メートルとなり、20年には1万立方メートルを超えた。

 ナラ枯れと同様に昆虫によってマツ類が枯れる「マツ枯れ」被害も深刻だ。県内では1976年に郡山市で初めて確認され、ピーク時の96年には7万362立方メートルに上った。被害は現在も進行しているとみられる。

 ■影響は多方面に

 「『樹木が枯れてしまった』で済む話ではない」。昨年11月に郡山市熱海町高玉周辺の松林でマツ枯れの様子を目の当たりにした福島大食農学類准教授の福島慶太郎(44)は警告する。ナラ枯れやマツ枯れで腐朽が進むと倒木の恐れが出てくる。樹木が枯れて根が土壌をつなぎ留める機能を失えば土砂崩れの危険性が高まる。川の水質が低下するなど「影響は多方面に及ぶ」という。

 ナラ枯れやマツ枯れは被害が一気に広がりやすく、老木ほど被害に遭いやすいとされる。そのため早期の対策や適切な森林整備、樹木利用が重要という。

 福島は松林を調べる中でつぶやいた。「関西でこれだけ立派なマツは少ない。福島県には素晴らしい景観が広がっている。関西と同じような状況にしたくない」。かつて暮らした関西で病虫害によって森林が失われていく状況を見てきただけに「被害を繰り返してはならない」と決意を込めた。(文中敬称略)

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 ナラ枯れとマツ枯れ 昆虫を媒体とする伝染病。ナラ枯れは樹木内部に侵入したカシノナガキクイムシなどが植え付ける菌によって木の中の水が流れる機能が失われ、葉が赤褐色に変色して枯死する。マツ枯れはマツノマダラカミキリなどによって引き起こされる。