【環境考察/森の再生】花粉症に温暖化の影...飛散量少ないスギに

 
スギなどから飛散される花粉=昨年3月、いわき市

 高さ数メートルはあるスギから多量の黄色い粉が舞い始め、あっという間に周囲を覆った。鼻や口を手で押さえる人の姿も。「花粉はつらい」。そんな声が聞こえてくる。

 多くの人を悩ます花粉症は、気候変動によってどう変化していくのか。スギ花粉などを研究する森林総合研究所(茨城県)植生管理研究室長の倉本恵生(しげお)(55)は「地球温暖化が進むことで飛散量が爆発的に増えることは考えにくいが、何らかの形で影響は出るだろう」と推測する。

 一定量飛散へ

 倉本によると、スギ花粉の飛散量は前年の花のつき具合や夏の気温などで、多くなるか少なくなるかが決まる。飛散量と温暖化の関係は解明されていないものの、温暖化により将来的には飛散が多い年と少ない年の差が小さくなり、毎年一定量が飛散する可能性があるという。そのため「症状が出にくい年は減るかもしれない」と倉本はみる。

 国内外では温暖化で飛散量が増えたり、飛散時期が長くなったりするとの研究結果もあるという。

 花粉症の被害を軽減させるため、国は昨年5月に▽発症▽発生源▽飛散―を柱とする対策を取りまとめた。中でも発生源については、スギ人工林を伐採し、少花粉や無花粉のスギへの植え替えを進める考えだ。

 「スギの植え替えは県内でもどんどん進むだろう」。森林総合研究所林木育種センターで25年近くにわたって花粉の少ないスギを研究し、現在は喜多方市でスギの苗木を生産する星比呂志(64)は言う。星によると、県内でスギの苗木は県農林種苗農業協同組合を中心に年間90万本程度生産されているが、そのうちの約4割が花粉の少ないものに変わり、今後さらに増えるという。

 活用法に課題

 県も2032年度までに県内で植樹する全てのスギ苗木を新品種に置き換える方針を示している。ただ「伐採したスギの活用法を考えていく必要がある」と星は課題を挙げた。

 スギは苗木を植えてから20~30年で花をつけ、花粉を飛ばすようになる。国内では木材需要の拡大などから戦後にスギが集中して植えられたものの、伐採が進まなかったため、近年になって花粉の飛散量が増えてきた。こうした背景を踏まえ、倉本は指摘する。「林業を取り巻く状況や森林の在り方を知り、生活の中で木を使うことを取り入れていくことが大事になってくる」(文中敬称略)

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 スギ花粉 スギ花粉を放出する雄花は7月ごろから形成を始め、11月ごろに花粉が成熟する。その後休眠状態になり、2~4月ごろに飛散する。スギなどの花粉症患者の正確な数は分かっていないが、有病率は増加傾向にあり、現在は4割を超えているとされる。