【環境考察/森の再生】カーボンオフセット、CO2排出量「相殺」

 

 「1人2本を植えてください」。雨が降る北塩原村のリゾート施設で昨年11月、郡山ザベリオ学園中(郡山市)の生徒がカラマツの苗木を植えていた。「大きく育ってほしい」。幼い木にそんな願いを込めた。

 ■「見える化」推進

 植樹は、県が本年度から始めたカーボンオフセット事業の一環だ。移動や観光などで排出される二酸化炭素(CO2)の量を計算式に当てはめて数値化し、その分を吸収する木を植えて相殺する。「CO2排出量の削減には限界があり、相殺する仕組みも必要。生活の中で、どれほどのCO2が排出されるかを『見える化』していきたい」と県環境共生課の担当者は話す。

 ■売却益を整備費

 内容は異なるものの、喜多方市は面積の約7割を占める森林の整備を進めるため、10年ほど前からカーボンオフセットに取り組んでいる。国が進める「オフセット・クレジット(現J―クレジット)」制度を活用。森林の整備計画を策定し、整備によって見込まれるCO2吸収量をクレジット(排出権)として認証を受け、企業や団体などに販売する。売却益は間伐などの森林整備に充てていく仕組みだ。

 市はこれまで、2380トン分の吸収量をクレジット化し、うち2137トン分を販売した。金額ベースで2137万円に上り、森林整備や管理、現況調査などに充てている。販売先は企業や自治体などで、企業では製造業が多いという。市農山村振興課係長の久保隆(46)は「当初は理解が進まず、クレジットを活用する企業や団体がなかったが、最近は環境問題や温暖化対策への認識が深まり、活用先が増え、問い合わせも増加している」と胸を張る。

 購入側にもメリットはある。事業活動で出るCO2を相殺できるほか、「環境問題に取り組んでいる」と対外的な評価につながるからだ。東京・中野区は2015年度以降、森林整備などに関する協定を結ぶ喜多方市からクレジットを購入。イベントや清掃車のごみ収集・運搬作業などで排出されるCO2のうち、削減できない量を埋め合わせしている。区の担当者は「森林の維持管理などを行わずにCO2の排出量削減につなげることができる」とメリットを挙げる。

 ただ、販売先は喜多方市外の企業や自治体で、市内での広がりに欠く。「この取り組みが市内や県内の企業、団体に広がれば森林保護や地球温暖化対策につながるのではないか」。久保はそう期待する。(文中敬称略)

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 カーボンオフセット 日常生活や経済活動で排出された二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(カーボン)を、植林や温室効果ガス削減活動などへの投資を通して埋め合わせ(オフセット)する。国は2008年にオフセット・クレジット(J―VER、現J―クレジット)制度を創設。CO2吸収量を「クレジット」として認証し、企業や団体などに販売する取り組みを始めた。