【環境考察/森の再生】中高層木造ビルに脚光 脱炭素推進へ

 
スギやヒノキなどを活用して建てられたビル=仙台市

 国内で木造の中高層ビルの建設が相次いでいる。背景にあるのが気候変動への対応と、森林資源の有効活用だ。脱炭素の推進策として新たな建築物が脚光を浴びる。

 仙台市のJR仙台駅から徒歩数分の場所にある7階建てビル「高惣(たかそう)木工ビル」。木の柱や梁(はり)がガラス越しに見え、周囲のビルとはたたずまいが異なる。「主要構造部の全てが木造で、スギやヒノキを使用しています」。設計・施工した株式会社シェルター(山形市)営業部リーダーの孫田正樹(50)は説明する。

 ビルには東日本大震災で被災した福島、岩手、宮城の3県などの木材が使われており、2021年の完成当時は「国内初の純木造7階建てビル」として注目を集めた。持続可能な森林経営が行われている森林で生産された木材の使用を示す「SGEC/PEFC―CoCプロジェクト認証」も取得している。

 ■「耐震」「耐火」課題

 木造ビルで課題になるのが「耐震性」と「耐火性」だ。同社は木と木の接合部に金物を使用することで耐震性を高めた。耐火性は核となる木材を石こうボードで囲み、さらに木材で覆う「木質耐火部材」を開発したことでクリアした。耐震性は鉄骨と差がなく、孫田は「温かみがあって癒やしも感じられる」と強調する。

 木造の中高層ビルの建設は各地で進む。大林組は横浜市に11階(地下1階)建ての施設を建設し、竹中工務店などは東京・中央区で17階建てのオフィスビルを建設中。シェルターも東京・中央区で10階建て木造のビルを手がけるなど事業を広げている。

 背景には00年の建築基準法改正で、耐火性能を満たせば4階建て以上の建物に木材を使うことが可能になったことが挙げられる。加えて環境面での効果も大きい。木材を使った建設は二酸化炭素(CO2)の排出量が鉄やコンクリートに比べて少なく、老齢化した木材を伐採して新たに植林することで、より多くのCO2が吸収される。木造中高層ビルの建設が脱炭素に貢献する。

 ■県内建築進まず

 東邦銀行が宇都宮市に木造と鉄筋コンクリート造りを組み合わせた4階建ての中層オフィスビルを建築した例はあるものの、「県内で建設の動きはあまり進んでいない」(とうほう地域総合研究所)という。ただ、環境問題への関心の高まりや木材活用の観点などから、同研究所研究員の木村正昭(55)は「これから積極的に活用するところが出てくる可能性はある」と見通した。(文中敬称略)

 木造建築物を巡る動き 2010年に木材利用促進法が施行され、公共施設を中心に木材の利用が進んだ。18年には経済同友会が木造の中高層ビルを増やして林業を活性化させ、地方創生を推進するべきとする提言を発表。21年施行の改正法では「脱炭素社会の実現」が明記され、民間の建造物も対象に加えられた。