「生きた証し」集める 能登地震福島民友ルポ、妻と娘の遺品捜索

 
つぶれた自宅兼店舗の中から思い出の品を捜す楠さん。「今も現実を受け入れられない」と胸の内を明かした。後方が倒れたビル=30日午後1時35分ごろ、石川県輪島市河井町

 能登半島地震による建物の倒壊や火災で甚大な被害を受けた石川県輪島市河井町。30日、倒れたビルの下敷きとなって崩壊した自宅兼店舗で、亡くなった妻と娘の思い出の品を捜す楠健二さん(55)の姿があった。「今も現実を受け入れられない。2人の物を捜して、少しでも気を紛らわせたい」。楠さんはがれきの下に潜り込み、2人が「生きた証し」を少しずつかき集める。

 一家で迎えた正月。地震発生時、楠さんは妻由香利さん=当時(48)=と帰省中の長女珠蘭(じゅら)さん=当時(19)=のほか次男、次女の5人で自宅の3階で過ごしていた。自宅がすさまじい揺れに耐えたのもつかの間、横倒しになった隣のビルに押しつぶされた。次男と次女は何とか引っ張り出せたが、2人はがれきに挟まれたまま。初めは「水が飲みたい」という珠蘭さんの声も聞こえたが、救助活動は困難を極め、すぐそこにあった2人の命を救うことはできなかった。

 「あのビルさえ倒れてこなければ...。本当に悔しい。2人を返してくれるなら、何もいらない」

 神奈川県から6年前に移住した楠さんは居酒屋「わじまんま」を経営。地域の人々や観光客らに愛される店になり、昨年6月に5周年を迎えた。

 珠蘭さんは今月5日に20歳の誕生日を迎え、「二十歳のつどい」にも出席するはずだった。楠さんが心待ちにしていた成人祝いでまな娘と杯を交わす夢はかなわなかった。

 県外で葬儀を執り行い、しばらく何も手につかなかったという楠さん。「このままぼーっと毎日を過ごしていたら、女房と娘に怒られる」。一人輪島に戻り、28日から毎日、がれきの下に潜って遺品を捜す日々を続けている。

 これまでの捜索で珠蘭さんの「二十歳のつどい」の前撮りの写真や2人が使っていた枕、ぬいぐるみなどを回収した。30日は、ビールが大好きだったという由香利さんが使っていたタンブラーや毛布などが見つかった。

 ただ、2人のスマートフォンや由香利さんから昨年4月の誕生日に贈られた大切な腕時計はまだ見つかっていない。捜索は2月9日まで続ける予定だ。

 愛する2人を奪った「あの日」から間もなく1カ月。楠さんにとっては通過点の一つでしかない。だが、楠さんはまた輪島の地で「わじまんま」を復活させると心に決めている。「復興がいつになるかは分からない。でも絶対ここで店を再開させる」。涙で目を潤ませながら、将来を固く誓った。(記事、写真とも報道部・多勢ひかる)